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ふたりの科学

離婚の「もしも」を話すのは、別れる前提なの?

…「半分は離婚する」と知っている人たちが、自分たちには0%と答えていたにゃ。

この研究を一枚で
問い
離婚がめずらしくないと知っている人は、自分たちの離婚の見込みをどう考えているのか
どこで
アメリカ・バージニア州の町で結婚許可証を申し込んだ、初めて結婚する137人。ほとんどが結婚して2か月以内だった。あわせて、家族法の授業を受ける法学部の学生にも(Baker & Emery 1993)
どうやって
同じアンケートで、世の中の離婚や養育費についての見込みと、自分たちの場合の見込みを聞いた。離婚の法律についての50問も
わかったこと
世の中の離婚は「50%」とほぼ正確に答えたのに、自分たちが離婚する見込みは、答えのまんなかが0%だった。家族法の授業で法律にくわしくなっても、自分たちへの見込みは変わらなかった
その後の研究
新婚の82組を4年追った研究では、「これから幸せでいられる」という期待が満足を支えたのは、ふたりの問題の話し合い方がうまいときだった(2004年)

婚姻届を出す前の夜、
こんな会話、なかったにゃ?

明日、朝いちで出しに行こうね
ねえ、お金のこととか、何か決めておく?
え、なんで? 別れる前提?
…ううん、なんでもない
(聞いた私のほうが、悪いことをした気がした)

離婚がめずらしくないことは、知っている。
まわりにも、いる。

でも、自分たちのこととなると、
考えること自体が
縁起でもない気がする。

結婚したばかりの人たちに、
そこをまっすぐ聞いた研究があるにゃ。

🧪 研究 結婚したての人に、離婚の見込みを聞く

結婚許可証を出したばかりの
137人に届いた、アンケート

法律の研究者のベイカーさんと、心理学者のエメリーさん(1993年)は、アメリカのバージニア州の町で、結婚許可証を申し込んだばかりの人たちにアンケートを送ったにゃ。どちらも初めての結婚で、夫と妻に1通ずつ、別々に答えてもらったにゃ。

返ってきたのは137人ぶん。ほとんどの人はもう結婚していて、その多くは、結婚して2か月もたっていなかったにゃ。

聞いたのは、まず世の中のこと。「いま結婚するアメリカの夫婦のうち、いつか離婚するのは何%くらい?」

答えのまんなかは50%。当時の数字に、ほぼぴったりだったにゃ。

それから、同じ人に自分たちのことを聞いたにゃ。「あなたたちが離婚する見込みは?」

予想してみるにゃ

「自分たちが離婚する見込み」の答えのまんなかは、何%だったと思う?

📊 結果の読み方

知らないから、
楽観していたわけじゃない

同じすれ違いは、離婚の数字だけじゃなかったにゃ。養育費のことも聞いていたにゃ。

養育費は、全部払われる?
世の中で、養育費が決まった親のうち、全部受け取れている割合(答えのまんなか)40%
「うちの相手なら、全部払う」と答えた人98%

世の中のほうは、かなり正確な見積もりだったにゃ。

世の中では、全部受け取れるのは半分に届かないくらい。そう見積もっていた人たちが、自分の相手なら全部払う、と答えていたにゃ。

離婚したときのお金のことを、結婚前の取り決めにしておくこと。それに少しでも関心があると答えた人は、1.5%だけだったにゃ。

📊 わかったこと

世の中の離婚や養育費の数字は、ほぼ正しく知っていた。
でも、その数字を自分たちには当てはめなかった

もうひとつ、アンケートには離婚の法律についての50問も入っていたにゃ。こちらの正解は6割ほど。当てずっぽうでも半分は当たる問題で、少しましなくらいだったにゃ。

法律のことは、よく知らない。数字は、よく知っている。それでも自分たちは0%。ここが、この研究のいちばんふしぎなところにゃ。

📊 同じ論文の、もうひとつの調査

家族法を14週間学んでも、
「うちは」は動かなかった

「法律をよく知らないから、楽観できるんじゃないか」。研究者たちはそう考えて、法学部の学生にも同じアンケートをしたにゃ。

家族法の授業の最初の日に92人、14週間の授業の終わりに80人が答えたにゃ。

📊 わかったこと

授業のあと、法律の問題の正解は増えた。
でも、自分たちの結婚がどのくらい続くか、
離婚したらどうなるかの見込みは、
授業の前と変わらなかった

ルールを知ることと、そのルールが自分に関係あると思うことは、別のことだったにゃ。

「ちゃんと知れば、ちゃんと備える」とは、かぎらないみたいにゃ。

🤔 なぜ、自分たちだけ0%なのか

「平均」の中に、
自分たちを数えていない

研究者たちの説明はこうにゃ。人は、自分たちのことを「結婚する人たちの平均的なひと組」だとは思っていない。だから、平均から出た数字を、自分たちには関係のないものとして脇に置いてしまう。

50%は、名前も顔も知らないたくさんの夫婦の数字にゃ。目の前の相手は、その「たくさん」のひとりじゃない。そう感じるのは、ふしぎなことじゃないにゃ。

よい面

踏み出す力、続ける力

研究者たちは、この楽観にはよい面もあるかもしれないと書いていたにゃ。「どうせ半分は」と思っていたら、結婚に踏み出せない人もいる。長く続けたいという気持ちとがんばりを、楽観が支えているのかもしれないにゃ。

気をつけたい面

暮らしの決めごとに、入りこむ

同時に、この楽観は、結婚しているあいだの決めごとにも入りこむかもしれない、と書いていたにゃ。仕事を続けるか家に入るか、子どもをいつ何人持つか、出産のあとどのくらい仕事を離れるか。

離婚のあと暮らし向きが大きく下がりやすいのは妻の側なので、若い女性ほど、この楽観で損をしやすいかもしれない、とも。

どちらも、確かめきった答えではなく、研究者たちの見立てにゃ。

🔍 その後の研究

楽観が支えになるのは、
どんなふたり?

では、楽観はないほうがいいのかにゃ。

2004年に、初めての結婚をして数か月の82組の夫婦を、4年間、半年ごとにたずねた研究があるにゃ。最初に「これから幸せでいられるか」「相手がどうふるまうか」への期待を聞き、ふたりが困りごとを話し合う様子を録画して、話し合い方を見たにゃ。何かあると相手のせいにしやすいかどうかも聞いたにゃ。

🔍 わかったこと

話し合い方がうまいふたりでは、
明るい期待を持っていたほうが、満足が長く保たれた。

話し合い方がうまくいっていないふたりでは、
明るい期待を持っていたほうが、満足の下がり方が大きかった

同じ「うちは大丈夫」でも、話し合える力がそばにあるときは支えになり、ないときは、あとで落差になったにゃ。

楽観が悪いわけでも、悲観がいいわけでもないにゃ。期待と、ふたりのやり方が合っているか、だったにゃ。

📝 今に置き換えて考える

婚姻届は紙一枚。
「もしも」のルールは、
2026年に変わった

研究の人たちは、30年以上前のアメリカで、結婚許可証を出したばかりの人たちだったにゃ。

国も時代もちがう。それでも、研究に出てきた場面は、いまの日本の暮らしにもあるにゃ。

役所の窓口で

もしものルールは、だれも説明しない

婚姻届は、紙一枚。窓口で、離婚したあとの子どもやお金のルールを説明されることは、ふつうはないにゃ。

そのルールは、2026年4月に大きく変わったにゃ。離婚のあと、父母ふたりとも親権を持つ「共同親権」も選べるようになった。取り決めがないままでも、決まるまでのあいだ、子ども1人あたり月2万円の養育費を請求できるしくみもできたにゃ。知らなくても、結婚はできる。たいていの人は、困ってはじめて調べるのかもしれないにゃ。

98%と、3割

「うちの人なら払う」と、いまの数字

研究では、98%の人が「相手は養育費を全部払う」と答えていたにゃ。

日本の国の調査(2021年)で、母子家庭のうち養育費を今も受け取っているのは28.1%。取り決めをしていた家庭でも57.7%だったにゃ。聞いていることがちがうから、そのまま比べられる数字じゃないにゃ。それでも、「うちの人なら」と「実際には」のあいだに、すき間があることは見えてくるにゃ。

2026年からは、養育費を書面で取り決めておけば、支払いが止まったときに、その書面で差し押さえの申し立てができるようになったにゃ。

働き方を変える日

「うちは大丈夫」が、決めごとの前提になるとき

研究者たちが気にしていた「暮らしの決めごと」は、いまの日本なら、育休のあとに時短にするか、扶養の内に働き方を変えるか、という話かもしれないにゃ。

そういう話をするとき、「うちは大丈夫だから」は、たいてい口に出さないまま前提に入っている。そこに「もしも」をひとつ足すことは、相手を疑うことにはならないと、ねこたちは思うにゃ。

あなたならどれ?

「もしも」のときのお金や子どものことを、ふたりで話すこと。いまのあなたに近いのはどれ?

🐱 猫の国の研究所より

研究所のねこたちが
二度見したところ

家族法の授業を、14週間。

終わるころ、学生たちは
法律の問題を
前より多く解けるようになっていたにゃ。
それでも、自分たちの結婚が
どのくらい続くかの見込みは、
最初の日のままだったにゃ。

知れば備える、のなら、
授業のあとで少しは動いたはずにゃ。

動かなかったのは、
「うちは0%」が、知らないことから
来ているんじゃないからだと思うにゃ。
目の前の相手を、
平均の中のひと組とは数えられない。
ふたりを大事に思う人なら、
たぶんだれでもそうなるにゃ。

そこへ、4年追いかけた
82組の夫婦を並べてみたにゃ。

明るい期待が満足を支えていたのは、
困りごとをふたりで
話し合えているときだったにゃ。

だとしたら「もしも」の話は、
「うちは大丈夫」を打ち消すものじゃなく、
それを支える側に
あるのかもしれないにゃ。

ふたつは別々の人たちを調べた研究で、
線でつないだのは、ねこたちにゃ。

結婚前の取り決めに、
少しでも関心があった人は、

百人いたら、
一人か二人。

「もしも」を先に口にする人は、
いつも、そのくらい少ない側にゃ。

「別れる前提?」と返ってくるのも、
たぶん、疑われたからじゃない。
相手の中でも、ふたりは
0%のままなのにゃ。

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📚 参考文献

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Baker, L. A., & Emery, R. E. (1993). When every relationship is above average: Perceptions and expectations of divorce at the time of marriage. Law and Human Behavior, 17(4), 439-450. リンク
McNulty, J. K., & Karney, B. R. (2004). Positive expectations in the early years of marriage: Should couples expect the best or brace for the worst? Journal of Personality and Social Psychology, 86(5), 729-743. リンク
厚生労働省 (2022). 令和3年度 全国ひとり親世帯等調査. リンク
法務省. 民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について(令和6年法律第33号・2026年4月1日施行). リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
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