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恋愛・パートナーシップ

「彼のこと、良く見すぎ」と笑われた。私、見えてないの?

…恋人を本人より良く見てしまうのは、見えていないからじゃないかもにゃ。

この研究を一枚で
問い
恋人を実際より良く見ていると、あとでがっかりするのか。それとも、ふたりを支えるのか
どこで
カナダの大学で、つき合っているカップル121組。平均19歳ほど、つき合って1年半ほど(Murray, Holmes & Griffin 1996)
どうやって
自分・恋人・理想の恋人を、人柄のことばで採点してもらい、恋人の自己評価より高く見ている分を「良く見ている度合い」とした。1年のあいだに3回たずねた
わかったこと
おたがいを良く見ていたカップルほど1年後も続いていて、ケンカや迷いも増えにくかった。良く見てもらえた人は、自分のことも少し良く見るようになっていた
その後の研究
結婚したての夫婦193組を3年追った研究でも、相手を理想の人に重ねて見ていた人ほど、満足が下がりにくかった(2011年)

恋人の話をしていて、
こんなふうに言われたこと、ないにゃ?

彼ね、ほんとにやさしいの。この前も駅まで迎えに来てくれて
それ、ふつうじゃない?笑
え、そうかな…
あんた、彼のこと良く見すぎだって
(…わたし、見えてないのかな)

好きな人のことは、
つい、まわりより高く見積もってしまう。

「恋は盲目」と笑われると、
ちょっと不安になるにゃ。
現実をちゃんと見ている人のほうが、
うまくいくんじゃないか、って。

🧪 研究 恋人を、本人より良く見ている?

121組のカップルに、
人柄の点をつけてもらう

心理学者のマレーさんたち(1996年)は、カナダの大学で、つき合っているカップル121組に集まってもらったにゃ。平均19歳くらい、つき合って1年半ほどのふたりにゃ。

ふたりは別々の席で、「やさしい」「気持ちに応えてくれる」「すぐ批判する」「なまけがち」といった人柄のことばに、9点満点で点をつけたにゃ。自分について。恋人について。理想の恋人と、「ふつうの恋人」についても。

ものさしにしたのは、恋人が自分自身につけた点にゃ。本人が思う自分より、どれだけ高く見ているか。それを「良く見ている度合い」としたにゃ。

自分への点だって、人はたいてい甘めにつけるにゃ。それよりさらに上なら、なかなかのバラ色ということにゃ。

人柄の点(9点満点・はじめの調査の平均)
本人が、自分につけた点6.65
恋人が、その人につけた点6.96
「ふつうの恋人」につけた点5.95

とくに女性たちが、彼を彼自身より高く見ていたにゃ。男性たちは、はじめは彼女の自己評価とほぼ同じで、1年後には上回っていたにゃ。

見た目でも、似たことが起きるにゃ。2009年に、恋人のいる256人を調べた別の研究では、男女とも、恋人の見た目を自分より魅力的だと評価していたにゃ。その差は、関係に満足している人ほど大きかったにゃ。

🧪 研究 1年たって、どうなった?

1年のあいだに、
43組が別れた

4〜5か月後と、1年後。研究者たちはふたりにもう一度連絡して、まだつき合っているかをたずね、同じ質問に答えてもらったにゃ。

1年のあいだに、43組が別れていたにゃ。

予想してみるにゃ

続いたカップルと、別れたカップル。はじめの調査ではっきり違っていたのは、どっちだと思う?

📊 結果の読み方

バラ色の目は、
がっかりのもとに
ならなかった

📊 わかったこと

おたがいを良く見ていたカップルほど、1年後も続いていた。

続いたふたりでも、良く見ていた人・良く見られていた人ほど、
ケンカや「この人でいいのかな」という迷いが増えにくかった。

良く見てもらえた人は、1年のあいだに、
自分のことも少し良く見るようになっていた

続いたカップル全体では、1年で満足は少しずつ下がり、ケンカは少しずつ増えていったにゃ。恋のはじめのきらきらが落ち着いていく、よくある流れにゃ。

その中で、彼を良く見ていた女性たちは、満足が下がりにくかったにゃ。良く見ていたせいで、あとで大きくがっかりする、ということは起きていなかったにゃ。

研究者たちはこれを、本人がカエルだと思っている人を、王子さまやお姫さまに変えていく、と書いたにゃ。論文の題も「恋は盲目ではなく、先を見ている」という意味にゃ。

ただ、良く見ていた人たちは、はじめから関係に満足している人たちでもあったにゃ。別れにくさだけなら、その満足でほぼ説明がついてしまう。

それでも、ケンカや迷いが増えにくかったことと、見られた人が自分を良く思えるようになったことは、満足の高さを差し引いても残ったにゃ。

🤔 なぜ、良く見ると続くのか

欠点に、
「でも」をつける

研究者たちの説明

欠点を、いいところとつないで読む

良く見ている人は、欠点を見ていないわけじゃない。いいところと結びつけて読んでいる、と研究者たちは考えたにゃ。「口数は少ない。でも、そのぶんどっしりしている」。

こういう「でも」が先に用意されていると、小さな欠点が「この人でいいのかな」という迷いに育ちにくい。研究者たちは、手もとの別のデータでも、そう結びつけているふたりほど長続きしていた、と書き添えているにゃ。

古くからある考え方

見られた姿に、人は近づいていく

人は、まわりの人の目に映る自分を通して、自分を知っていく。社会学や心理学で古くから言われてきた考え方にゃ。期待が相手のふるまいを引き出して、ほんとうにそうなっていくことは「自己成就予言」と呼ばれているにゃ。

研究者たちは、とくに「そうありたいけれど、自信がない」ところで変化が起きやすいのでは、と考えたにゃ。思いやりのある人でいたいけれど、せっかちなところもある。そんな人が「やさしいよね」と見られ続けたら、ということにゃ。

研究で見えたこと

理想のほうが、恋人の形に寄っていく

1年のあいだに、理想の恋人の姿は、目の前の恋人の見え方に合わせて動いていたにゃ。恋人にいいところをたくさん見ていた人は、理想を高いまま保ち、あまり見ていなかった人は、理想を下げていったにゃ。

理想どおりの人を見つけた、というより、この人の形が理想になっていく。研究者たちは、これが良く見る目を現実から離れすぎないようにしている、と考えたにゃ。

ただ研究者たちは、こうも書いているにゃ。良く見る目がいちばんもろくなるのは、相手の実際からいちばん離れたとき。

実際、恋人が自分のことをあまり良く思えていないと、良く見る目は少しずつ現実に引き戻されていたにゃ。はげしいケンカが多かったふたりは、そのあと相手を良く見にくくなってもいた。良く見る目と、ふたりの毎日は、行ったり来たりしているのかもしれないにゃ。

🔍 その後の研究

結婚して3年たっても、
同じだった?

大学生の恋の話でしょ、と思うかもしれないにゃ。

2011年に、同じ研究者たちのチームが、結婚して2〜6か月の夫婦193組を、3年間、半年ごとにたずねた研究があるにゃ。自分・相手・理想の相手に点をつけてもらい、相手を「理想の人」にどれだけ重ねて見ているかを調べたにゃ。相手がほんとうに理想に近い人かどうかは、相手の自己評価を使って差し引いたにゃ。

🔍 わかったこと

全体では、満足は3年ではっきり下がっていった。

相手をあまり理想に重ねていなかった人は、満足が大きく下がった。
いちばん重ねていた人は、3年たっても目立って下がらなかった

相手の自己評価の高さや気分の安定ぶり、ただ相手を甘く見ているだけ、という分を差し引いても、この差は残ったにゃ。

しかも、理想に重ねていた人ほど、「この人は理想どおり」という見え方そのものは、あとで大きく下がっていたにゃ。がっかりはしても、満足までは崩れなかったということにゃ。研究者たち自身は、これは結びつきを見たもので、証明ではないとも書いているにゃ。

ただ、良く見ることと、よく知ることは、別の話でもあるにゃ。2005年の別の研究では、結婚したての夫婦の多くが相手を全体として高く見ていたけれど、そのうえで相手の細かな持ち味まで正確につかんでいた妻たちのほうが、のちに離婚することが少なかったにゃ。

大きく好きでいながら、細かく知っている。その両方は、ちゃんとなりたつにゃ。

🐸 今に置き換えて考える

「蛙化」ということばが
はやる時代に

研究者たちが「カエルを王子さまに」と書いたのは、1996年、カナダの大学生の恋の話だったにゃ。

いまの日本では、その逆向きのことばが広まったにゃ。「蛙化現象」。

ことばの今

小さなかっこ悪さに、名前がつく

もとは2004年に日本の心理学者が名づけたことばで、好きな人に好かれたとたん気持ちが冷める、という意味だったにゃ。

それがここ数年、フードコートで席を探してうろうろする姿、ICカードの残高が足りなくて改札で止められる姿…そんな小さなかっこ悪さで冷めることを指して、動画やSNSで「あるある」として広まったにゃ。2023年の前半には、中学生から20代半ばまでの人に流行語を聞いた調査で、1位になったにゃ。

カエルを探す目

「でも」の前に、話が終わってしまう

研究で長く続いたふたりを支えていたのは、欠点に「でも」をつけて読む見方だったにゃ。

蛙化のあるあるを読んでいると、恋人のかっこ悪い瞬間を見つけるたびに、名前がついて、笑って、そこで話が終わってしまう。「でも、そういうところが」と続ける前に。あのリストは、研究とは逆向きの練習になっているのかもしれないにゃ。

反対に、好きな人のかっこ悪いところまでいとおしく見える「蛇化」ということばも生まれたにゃ。研究のふたりに近いのはこちら。ただ、研究のふたりは丸のみしていたというより、欠点をちゃんと見たうえで、かみくだいていたにゃ。

カエルの側に立つとき

失敗を見せられる人の前で、人は育つ

「蛙化されたらどうしよう」と、恋人の前で道に迷うことも、小銭を数えることもできない。そんな気の張り方をしている人もいるかもしれないにゃ。

研究では、恋人に良く見てもらえた人は、1年のあいだに、自分のことも少し良く見られるようになっていたにゃ。うろうろしているあなたを見て笑ってくれる人の前でこそ、人は少しずつ、自分を好きになっていけるのかもしれないにゃ。

あなたならどれ?

恋人やパートナーの「かっこ悪いところ」を見たとき、あなたはどうなりやすい?

🐱 猫の国の研究所より

良く見ていた人は、
がっかりもしていた

「良く見すぎ」と笑われると、
自分の目のほうを疑いたくなるにゃ。
見えていないのは、私なのかなって。

研究者たちの見立てでは、
恋人を良く見ていた人たちは、
口数の少なさのような欠点も
見たうえで、「でも」をつけていたにゃ。

結婚して3年を追った研究では、
いちばん良く見ていた人ほど、
「この人は理想どおり」という思いが
大きく下がっていた。
がっかりは、ちゃんとしていたにゃ。
崩れなかったのは、満足のほうだったにゃ。

それに、その目は何にでも
「でも」をつけていたわけじゃないにゃ。
はげしいケンカが多かったふたりでは、
そのあと、バラ色はうすれていった。

強いことばや、行動を縛られることにまで
「でも」をつけて飲みこんでいるなら、
それは、この研究の目とは別のものにゃ。

121組と193組の答えから、
ねこたちがたどった筋道にゃ。
その先で見えてきたバラ色の目は、
目をつぶる目というより、
見たものをつなぎ直す目だったにゃ。

はじめの調査の、あの平均点にゃ。

「盲目」と呼ばれた
ひいき目は、9点満点で
0.3点ほどだったにゃ。

本人が自分につけた点より、
ほんの少しだけ上。
そう見られた人は、1年のあいだに、
自分のことを少し良く見るように
なっていたにゃ。

あなたの目に映るあの人と、
あの人が思っているあの人。
そのすきまは、見まちがいなのか。
それとも、これから育つぶんなのか。

📚 参考文献

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Murray, S. L., Holmes, J. G., & Griffin, D. W. (1996). The self-fulfilling nature of positive illusions in romantic relationships: Love is not blind, but prescient. Journal of Personality and Social Psychology, 71(6), 1155-1180. リンク
Murray, S. L., Griffin, D. W., Derrick, J. L., Harris, B., Aloni, M., & Leder, S. (2011). Tempting fate or inviting happiness? Unrealistic idealization prevents the decline of marital satisfaction. Psychological Science, 22(5), 619-626. リンク
Neff, L. A., & Karney, B. R. (2005). To know you is to love you: The implications of global adoration and specific accuracy for marital relationships. Journal of Personality and Social Psychology, 88(3), 480-497. リンク
Swami, V., Stieger, S., Haubner, T., Voracek, M., & Furnham, A. (2009). Evaluating the physical attractiveness of oneself and one's romantic partner: Individual and relationship correlates of the love-is-blind bias. Journal of Individual Differences, 30(1), 35-43. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com