🔬 猫の国 研究所
「幸せ」でも「意味」でもない、
第三の良き人生が
提唱されていた
…波乱の多かった人生は、
豊かだったと言っていいかもしれないにゃ。
「幸せになりたい」
「意味のある人生を送りたい」
…どこかで何度も、
聞いてきた言葉にゃ。
でもにゃ。
自分を振り返って、
「いまの自分は幸せか?」と問うと
答えに詰まる夜がある。
「自分の人生に意味があるか?」と問うと
胸が苦しくなる朝がある。
そんなとき、
「自分の人生はダメなのかな」と
思ってしまうことがあるにゃ。
でも2022年、
心理学に第三の枠組みが
登場していたにゃ。
人生の良さは、
幸せでも意味でも測れない
ものがあるかもしれない
バージニア大学(当時)の Shigehiro Oishi と Erin Westgate は、2022年に Psychological Review で「心理的に豊かな人生(Psychologically Rich Life)」という概念を提唱したにゃ。
彼らは、これまで心理学が「良き人生」をふたつしか測ってこなかったことを指摘したにゃ。
快適で、楽しくて、ストレスが少ない人生にゃ。
気分がよく、安心できる毎日にゃ。
貢献感、目的、つながりに満ちた人生にゃ。
「自分は何かに役立っている」と感じられる毎日にゃ。
視点が変わる経験に満ちた人生にゃ。
驚き、戸惑い、好奇心、複雑さ——
物語に値するような経験を多く持つ毎日にゃ。
この③こそが、これまで言葉になっていなかった第三の良き人生にゃ。
「心理的に豊かな人生」のおもしろい特徴はこれにゃ。
*幸せでなくても、
意味がなくても*、
豊かでありうる
たとえば、
・海外で迷子になって、知らない言葉で誰かに助けてもらった日
・予定通りいかなかった旅
・誰かと深く話し込んで、価値観が揺れた夜
・失恋して、自分の中の知らなかった部分が見えた経験
・苦しかったけど、振り返ると物語の核になっている時期
こういう経験は、その瞬間は幸せとは言えない。意味があったかもすぐにはわからない。
でも、振り返ったとき、
人生を厚みのあるものにしているにゃ。
Oishi たちは、これを「視点を変える経験 (perspective-changing experiences)」の蓄積として定義したにゃ。
Oishi らは、9カ国(アメリカ、日本、韓国、ドイツ、インド、シンガポール、アンゴラ、ポルトガル、ノルウェー)で大規模調査を行ったにゃ。
「もし3つの人生から1つだけ選ぶなら、どれにしますか?」と聞いたにゃ。
「幸せな人生」「意味のある人生」「豊かな人生」のうち、
豊かな人生を選んだ人は
もっとも多かったのは幸せ、次に意味、そして豊かさの順だったにゃ。少数派だけど、一定数の人は確かに豊かさを選んだにゃ。
国によって割合は違ったにゃ。
ドイツでは4人に1人近くが豊かさを選び、シンガポールでは少なかったにゃ。
そしてさらにおもしろい発見があったにゃ。
「いまの人生に後悔がある人」は、
豊かな人生を選びやすかった
幸せが足りなかった、意味も見つからなかった、と感じている人ほど、第三の道——豊かさ——を求めていたのかもしれないにゃ。
Oishi たちは「豊かさ尺度」を作って、どんな人が豊かな人生を送っているかも調べたにゃ。
豊かな人生を送っている人には、こんな特徴があったにゃ。
新しい場所、文化、考え方、アートなどに好奇心が強いにゃ。
「白か黒か」じゃなく、グレーやグラデーションを受け入れる柔軟さがあるにゃ。
出来事をひとつの物語として振り返り、苦しい時期も章のひとつとして捉えられるにゃ。
そして大事なのは——
豊かな人生は、幸せや意味と両立しないわけじゃないにゃ。
3つは独立した次元で、人によって配分が違うだけにゃ。
ここでちょっと、
立ち止まってみるにゃ。
自分の人生を振り返ったとき、
「幸せだった」とも
「意味があった」とも
言いにくいけど、
*「あの時期があったから、
今の自分がいる」*
と思える経験はないかにゃ?
…それが、もしかしたら
あなたにとっての
豊かさかもしれないにゃ。
幸せじゃなくても、
意味がはっきりしなくても、
豊かでありうるにゃ。
ここで大事な注意書きを置きたいにゃ。
「豊かな人生」論は、
苦しみそのものを美化したり、
我慢を勧める話ではない
Oishi 自身も論文で繰り返し書いているにゃ。
豊かさは結果論——つまり、振り返ったときに「あの経験は、自分の視点を変えた」と意味づけられたときに豊かになるにゃ。
いま現在、苦しいただ中にいる人に
「これも豊かさになるよ」と
外側から言うのは暴力的にゃ。
むしろこの理論が救うのは——
すでに通り抜けたあと、
「自分の人生は幸せじゃなかったかも」と
責めている人にゃ。
その人に、
「幸せじゃなくても、あなたの人生には豊かさという別の価値があったかもしれない」と別の物差しを渡してくれる——
そういう理論にゃ。
ここまでのデータを並べて、
研究所が思ったことにゃ。
世の中の「良き人生」の物差しは、
長いあいだ
「幸せ」か「意味」しかなかったにゃ。
だから、
波乱の多かった人。
何かを失った人。
意味を見つけられないでいる人。
…そういう人たちが
自分の人生を失敗と感じてしまう
空気があったかもしれないにゃ。
でも Oishi たちが
静かに教えてくれているのは、
もうひとつ物差しがあった
ということにゃ。
「幸せじゃなかったかもしれない。
意味も見つからなかったかもしれない。
でも、豊かだった」
——そう振り返れる人生も、
良き人生のひとつにゃ。
3つの物差しは、
どれかを選ばなきゃいけない
わけじゃないにゃ。
幸せが多かった季節があってもいい。
意味を感じられた季節があってもいい。
豊かな経験で揺さぶられた季節があってもいい。
そして、どれもなかった時期があっても、
それは「悪い人生」じゃないにゃ。
もちろん、研究が示しているのは
統計的な傾向であって、
すべての人やすべての人生に
同じように当てはまるわけじゃないにゃ。
そして、何度も書くにゃ。
いま苦しみのただ中にいる人に、
「これも豊かさになるよ」と
外から言うのはやめておくにゃ。
豊かさは、
本人が、自分の時間軸で
気づいたときに、初めて意味を持つにゃ。
研究を踏まえて、ひとつの読み替えを置いてみるにゃ。
人生の良さは、
快適さや正しさだけじゃなく、
厚みや手触りでも
測ってよかった
幸せは高さにゃ。
意味は向きにゃ。
そして豊かさは厚みにゃ。
高くなくても、
向きが定まっていなくても、
厚みのある人生はある。
もし自分の人生を
「あんまり幸せじゃなかったな」
「意味なんてなかったな」
と振り返って苦しくなる夜があったら、
もう一回、
厚みという物差しで
測り直してみてほしいにゃ。
…意外と、
分厚かったかもしれないにゃ。
幸せでも、意味でもない、
第三の良き人生がある。
波乱の多かった人生も、
振り返れば豊かだったと
言っていい。
…研究が教えてくれるのは、
そんなちょっと優しい話だったにゃ。
あなたの人生には、
きっと
物語に値する経験が
いくつもあるにゃ。
それは、幸せより
ずっと大事な何か
かもしれないにゃ。
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