50代になった今、僕はパートで働きながら、ふとあの日のことを思い出す。
30代のとき、一人の女性がいた。結婚を前提に付き合うかどうか——そんな重大な岐路に立っていた。彼女は悪い人じゃなかった。むしろ、いい人だった。でも、僕の中で何かがはっきりしなかった。「本当に大切な人なのか」その答えが、どうしても見つからなかった。
だから僕は、付き合わなかった。慎重に、慎重に考えた末の決断だった。
あれから20年近くが経つ。僕は今も一人だ。
後悔しているのか、と聞かれたら——正直に言おう。後悔している。でもそれは、彼女と付き合わなかったことそのものへの後悔ではないのかもしれない。僕が後悔しているのは、「チャレンジしなかった」ということなんだ。
慎重になることは大事だ。人生の大きな決断を前に、立ち止まって考えることは決して間違いじゃない。でも、僕は気づいたんだ。完璧な答えなんて、最初から存在しないということに。
結婚だって、今の時代、離婚は珍しいことじゃない。うまくいかなければ、やり直せる。そう思えば、少し気が楽になる。もちろん簡単なことじゃないけれど、人生は一度きりだ。完璧を求めて立ち止まり続けるより、不完全でも一歩踏み出してみる勇気の方が、ずっと大切なんじゃないだろうか。
もしあのとき、僕が彼女と付き合っていたら。もしかしたら、今とは違う世界が見えていたかもしれない。違う生き方を見つけていたかもしれない。うまくいったかどうかは、誰にもわからない。でも少なくとも、「あのとき」という過去に縛られることはなかっただろう。
今、もしあのときの僕と同じような状況にいる人がいたら、伝えたい。
気持ちが100%はっきりしなくても、いいんだよ。完璧な確信なんて、誰も持っていない。大切なのは、「やってみよう」と思えるかどうかだ。その小さな勇気が、人生を変える。
僕はチャレンジしなかった。その後悔を抱えて生きている。でも、この後悔が誰かの背中を押せるなら、少しは意味があるのかもしれない。
人生は思っているより短い。でも、思っているより何度でもやり直せる。だから、恐れないで。一歩、踏み出してみてほしい。
その先には、きっと何かが待っている。
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