年賀状
ふつう・4分

年賀状:あの時、ちゃんと謝ればよかった

匿名の言えなかった人・4分・ふつう

10年前、親友と喧嘩した。

原因は覚えてる。私が彼女の秘密をうっかり別の友達に話してしまったこと。

「なんで言ったの」

彼女の声、今でも覚えてる。怒ってるというより、悲しそうだった。

私は謝るべきだった。「ごめん、本当にごめん」って言えばよかった。

でも言えなかった。

なんでか分からない。プライドだったのかもしれない。「そんなに怒ること?」って思ってしまった自分もいた。

彼女からの連絡が減った。私からも連絡しなかった。

気まずいまま、時間が過ぎた。

1ヶ月、3ヶ月、半年。

「そのうち元に戻るでしょ」って思ってた。

戻らなかった。

年賀状が来なくなった。SNSの繋がりも、いつの間にか切れてた。

共通の友達に「最近どうしてる?」って聞いたことがある。

「元気だよ。結婚して、子どももいるみたい」

そうなんだ、って思った。知らなかった。

30歳になって、ふと思い出すことが増えた。

高校の時、一緒に帰った道。大学受験の時、励まし合った夜。初めての彼氏ができた時、一番に報告した相手。

全部、彼女との思い出。

今、私の周りには友達がいる。でも彼女みたいな存在は、いない。

何でも話せて、何も気を使わなくて、一緒にいるだけで安心できる人。

そういう関係は、簡単には作れないって、大人になって分かった。

去年、街で彼女を見かけた。

向こうは気づいてなかった。子どもの手を引いて、笑ってた。

声をかけようとした。でも、足が動かなかった。

10年経って、今さら何を言えばいいんだろう。

「あの時はごめん」?

もう遅い気がした。

家に帰って、泣いた。

謝りたかった。ちゃんと謝って、許してもらえなくてもいいから、気持ちを伝えたかった。

それができなかった自分が、情けなかった。

あの時、すぐに「ごめん」って言ってたら。

今も友達でいられたかな。彼女の結婚式に出てたかな。子どもを抱っこさせてもらえたかな。

分からない。分からないけど、今とは違ってたと思う。

「ごめん」は、言えるうちに言わなきゃいけない。

当たり前のことなのに、できなかった。

今でも時々、LINEの連絡先を見る。もう10年以上やりとりしてないアカウント。

メッセージを打っては、消す。打っては、消す。

送れない。

この後悔は、たぶん一生消えない。

消えなくていい。忘れちゃいけないって思うから。

― 匿名の言えなかった人

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