10年前、親友と喧嘩した。
原因は覚えてる。私が彼女の秘密をうっかり別の友達に話してしまったこと。
「なんで言ったの」
彼女の声、今でも覚えてる。怒ってるというより、悲しそうだった。
私は謝るべきだった。「ごめん、本当にごめん」って言えばよかった。
でも言えなかった。
なんでか分からない。プライドだったのかもしれない。「そんなに怒ること?」って思ってしまった自分もいた。
彼女からの連絡が減った。私からも連絡しなかった。
気まずいまま、時間が過ぎた。
1ヶ月、3ヶ月、半年。
「そのうち元に戻るでしょ」って思ってた。
戻らなかった。
年賀状が来なくなった。SNSの繋がりも、いつの間にか切れてた。
共通の友達に「最近どうしてる?」って聞いたことがある。
「元気だよ。結婚して、子どももいるみたい」
そうなんだ、って思った。知らなかった。
30歳になって、ふと思い出すことが増えた。
高校の時、一緒に帰った道。大学受験の時、励まし合った夜。初めての彼氏ができた時、一番に報告した相手。
全部、彼女との思い出。
今、私の周りには友達がいる。でも彼女みたいな存在は、いない。
何でも話せて、何も気を使わなくて、一緒にいるだけで安心できる人。
そういう関係は、簡単には作れないって、大人になって分かった。
去年、街で彼女を見かけた。
向こうは気づいてなかった。子どもの手を引いて、笑ってた。
声をかけようとした。でも、足が動かなかった。
10年経って、今さら何を言えばいいんだろう。
「あの時はごめん」?
もう遅い気がした。
家に帰って、泣いた。
謝りたかった。ちゃんと謝って、許してもらえなくてもいいから、気持ちを伝えたかった。
それができなかった自分が、情けなかった。
あの時、すぐに「ごめん」って言ってたら。
今も友達でいられたかな。彼女の結婚式に出てたかな。子どもを抱っこさせてもらえたかな。
分からない。分からないけど、今とは違ってたと思う。
「ごめん」は、言えるうちに言わなきゃいけない。
当たり前のことなのに、できなかった。
今でも時々、LINEの連絡先を見る。もう10年以上やりとりしてないアカウント。
メッセージを打っては、消す。打っては、消す。
送れない。
この後悔は、たぶん一生消えない。
消えなくていい。忘れちゃいけないって思うから。
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