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あの時、抱きしめていれば

📅 2025-11-03⏱️ 4分✍️ 匿名の母
後悔母親子育て忙しさやり直せない時間
息子が泣いていた。 「ママ、抱っこ」 私は、パソコンに向かっていた。締め切りが明日。資料がまだ終わってない。 「ちょっと待って。今、忙しいから」 息子は、私の足元でしばらく泣いていた。 そのうち、泣き止んだ。一人でおもちゃで遊び始めた。 「よしよし、いい子だね」 そう思った。手がかからなくて、助かる。 仕事が終わったのは、夜中の2時。息子はとっくに寝ていた。 これが、毎日だった。 あの頃、私は必死だった。 時短勤務とはいえ、仕事は山ほどあった。保育園の送り迎え、ご飯、お風呂、寝かしつけ。 一日が終わる頃には、ヘトヘトだった。 「抱っこして」 「絵本読んで」 「一緒に遊んで」 息子のリクエストに、いつも「後でね」と答えていた。 後でね。後でね。後でね。 その「後で」は、結局来なかった。 息子は今、中学生になった。 もう「抱っこ」なんて言わない。「絵本読んで」も言わない。 部屋にこもって、ゲームをしている。話しかけても、「別に」「うん」しか返ってこない。 普通の反抗期。そう思う。 でも、時々考える。 あの時、抱きしめていたら、何か変わっていたのかな。 仕事なんて、どうにでもなった。締め切りは延ばせた。最悪、徹夜すればよかった。 でも、息子の「抱っこ」は、あの瞬間しかなかった。 3歳の息子が「ママ」と泣いていた、あの時間は、もう二度と来ない。 先日、押し入れを整理していたら、息子が小さい頃の写真が出てきた。 笑ってる息子。泣いてる息子。寝てる息子。 私は、ほとんど写っていなかった。 撮る側だったから、じゃない。 一緒にいなかったから。 写真を見ながら、泣いた。 この子は、こんなに小さかったんだ。こんなに私を求めてたんだ。 なのに私は、パソコンに向かってた。 「仕事があるから」 それを言い訳にして、逃げてた。 息子より、仕事を選んでた。 分かってる。あの頃は、仕方なかった。生活のためだった。キャリアを途切れさせたくなかった。 でも、「仕方なかった」で片付けていいのか、今も分からない。 友達に話したことがある。 「私も同じだよ。みんなそうだよ」 そう言ってもらえて、少し楽になった。 でも、後悔は消えない。 息子に聞いてみた。 「小さい頃、寂しかった?」 「覚えてない」 そう言われた。覚えてないなら、いいのかもしれない。 でも、私は覚えてる。 足元で泣いてた息子。一人でおもちゃで遊び始めた息子。 あの背中を、今でも覚えてる。 やり直せない。 それが一番辛い。 タイムマシンがあったら、あの日に戻りたい。パソコンを閉じて、息子を抱きしめたい。 「ごめんね、待たせたね」って言いたい。 でも、戻れない。 だから今、できることをしようと思う。 息子が部屋から出てきた時、「おかえり」って言う。ご飯の時、「美味しい?」って聞く。 返事がなくても、話しかける。 中学生の息子は、もう抱きしめられない。 でも、言葉で抱きしめることはできるかもしれない。 遅いかもしれない。届いてないかもしれない。 それでも、やらないよりはいい。 あの時の後悔を、今の私が少しずつ返していく。 それしか、できないから。 --- *© 2025 匿名の母*