スーパーで買い物してた。
カゴを持って、野菜コーナーを歩いてた。
ふと、視線を感じた。
振り向くと、ベビーカーに乗った子どもがいた。
2歳くらいかな。まんまるの目で、こっちを見てる。
「ん?」
目が合った。
その子が、手を振った。
小さな手を、ぶんぶんって。
え、私に?
周りを見た。誰もいない。私しかいない。
私に、手を振ってる。
なんで?知らない子だよ?
でも、その子はニコニコしながら、ぶんぶんしてる。
気づいたら、私も手を振り返してた。
小さく、ひらひらって。
その子が、もっと笑った。
それだけ。
お母さんがベビーカーを押して、行っちゃった。
残された私は、野菜コーナーで一人、ぼうっとしてた。
なんだったんだ、今の。
でも、心がぽかぽかしてた。
知らない子に、手を振られた。
それだけなのに、なんでこんなに嬉しいんだろう。
家に帰っても、あの子のことを考えてた。
なんで私に手を振ったんだろう。
たまたま目が合ったから?私が面白い顔してたから?
分からない。でも、理由なんてどうでもいい。
あの子にとって、私は「手を振りたい人」だった。
それだけで、十分。
私、最近いつ手を振ったっけ。
考えてみたけど、思い出せない。
大人になると、知らない人に手を振らなくなる。
当たり前だけど、なんかもったいない気がした。
次の日、駅で電車を待ってた。
向かいのホームに、電車が来た。窓から、子どもがこっちを見てた。
今度は、私から手を振ってみた。
その子が、びっくりした顔をした。
そのあと、笑って手を振り返してくれた。
電車が発車して、その子は行っちゃった。
また、心がぽかぽかした。
なんだ、簡単じゃん。
手を振るだけで、こんなに温かくなれる。
知らない子に手を振られたこと。
知らない子に手を振ったこと。
どっちも、私の宝物になった。
大げさかもしれない。でも、本当にそう思う。
もしあなたも、毎日がちょっと灰色なら。
知らない子どもに、手を振ってみてほしい。
怪しい人だと思われるかもしれない。無視されるかもしれない。
でも、振り返してくれたら、その日は絶対いい日になる。
小さな手が、ぶんぶんって。
それだけで、世界は優しくなる。
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*© 2026 匿名の手を振り返した人*