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あなたがいない朝が来た

📅 2026-01-06⏱️ 5分✍️ 匿名の残された人
死別喪失悲しみ生きる愛した人
あなたがいない、最初の朝が来た。 目が覚めて、隣を見た。 誰もいない。 当たり前だ。昨日、あなたは死んだ。 でも、体が覚えてない。手が隣を探す。温もりを探す。 冷たいシーツだけが、そこにあった。 起き上がれなかった。 起き上がる意味が、分からなかった。 あなたがいない世界で、なんで私が息をしてるんだろう。 なんで、心臓が動いてるんだろう。 止まってほしかった。何もかも、止まってほしかった。 人が来た。親戚が来た。友達が来た。 「大丈夫?」 大丈夫なわけない。でも、頷いた。 「何かあったら言ってね」 何を言えばいいか分からない。「あの人を返して」って言っても、誰にも返せない。 葬儀があった。 たくさんの人が来た。みんな泣いてた。 私は、泣けなかった。 涙が出なかった。枯れたのかもしれない。壊れたのかもしれない。 ただ、座っていた。 あなたの写真を、見ていた。 笑ってる。あなたは、笑ってる。 なんで写真の中のあなたは笑えるのに、本物のあなたはいないんだろう。 意味が分からなかった。 葬儀が終わって、家に帰った。 静かだった。 あなたがいた頃は、テレビの音がした。「おかえり」の声がした。ご飯の匂いがした。 今は、何もない。 静かすぎて、耳が痛かった。 一週間が過ぎた。 ご飯を食べなきゃと思った。でも、食べ方を忘れた。 お腹が空いてるのか空いてないのか、分からなかった。 とりあえず、パンをかじった。味がしなかった。 夜は、眠れなかった。眠ると、夢にあなたが出てくる。 夢の中で、あなたは生きてる。笑ってる。話してる。 起きると、いない。 夢と現実の落差で、毎朝壊れそうになった。 一ヶ月が過ぎた。 少しずつ、泣けるようになった。 夜、一人で泣いた。声を出して泣いた。 誰もいないから、好きなだけ泣いた。 あなたの服を抱きしめて、泣いた。 まだ、あなたの匂いがした。 いつか消えるんだろう。それが怖くて、袋に入れて閉じた。 三ヶ月が過ぎた。 「そろそろ元気出して」 そう言われるようになった。 元気って、なんだっけ。 笑えばいいのかな。外に出ればいいのかな。 分からないまま、笑ってみた。 顔が引きつった。 でも、みんなは安心したみたいだった。 「良かった、元気になって」 元気になんか、なってない。 でも、言わなかった。 言っても、分からないだろうから。 半年が過ぎた。 ある朝、窓を開けた。 風が気持ちよかった。 「あ」 それだけ。でも、久しぶりに何かを感じた。 風が気持ちいいって、半年ぶりに思った。 その日、外を歩いた。 空が青かった。当たり前のことなのに、久しぶりに見た気がした。 あなたがいなくなってから、空を見てなかった。 いつも下を向いてた。 今日は、少しだけ上を向けた。 一年が過ぎた。 まだ、毎日あなたのことを考える。 写真を見て、話しかける。「今日、こんなことがあったよ」って。 返事はない。でも、聞いてくれてる気がする。 悲しみは、消えない。 消えないけど、形が変わった。 最初は、刺すような痛みだった。息ができないほどの痛み。 今は、鈍い痛み。ずっとそこにある。でも、息はできる。 あなたがいない世界で、私は生きてる。 生きていいのか、まだ分からない。 でも、生きてる。 あなたが愛したこの体を、あなたが好きだった私を、簡単に終わらせちゃいけない。 そう思えるようになった。 あなたのいない朝が、何百回も来た。 これからも、来る。 でも、もう少しだけ、生きてみようと思う。 あなたの分も、とは言わない。そんな大層なことじゃない。 ただ、あなたを愛した私として、もう少しだけ。 それでいいよね。 --- *© 2026 匿名の残された人*