ずっと正解を探していた。
進路。就職。転職。恋愛。結婚。住む場所。
全部に正解があると思っていた。
「こっちを選んだら、うまくいく」
「あっちを選んだら、失敗する」
そういう分かれ道がどこかにあると信じて、間違えないように、間違えないように生きてきた。
ネットで調べた。先輩に聞いた。本を読んだ。占いにも行った。
みんな違うことを言う。
「若いうちに挑戦しろ」と言う人もいれば、「安定が一番」と言う人もいる。
「好きなことを仕事にしろ」と言う人もいれば、「仕事に好きを求めるな」と言う人もいる。
どっちが正解なんだろう。
わからないまま、28歳になった。
転職するか迷っていた。今の仕事は嫌いじゃないけど、好きでもない。年収は平均くらい。特にやりがいもない。
転職サイトを毎晩見ていた。でも応募ボタンが押せない。
「今の会社にいた方がいいんじゃないか」
「でも、このままでいいのか」
「転職して失敗したらどうしよう」
「でも、転職しなかったことを後悔するかも」
ぐるぐるぐるぐる。半年くらい、ずっと。
ある日、大学の同期と飲んだ。
彼は転職して年収が上がっていた。楽しそうだった。
「お前も転職しろよ」と言われた。
別の同期は、同じ会社に10年いた。
「転職なんてリスクだよ」と言っていた。
どっちも正解に見えた。どっちも不正解にも見えた。
その夜、酔った頭でぼんやり思った。
もしかして、正解なんてないんじゃないか。
Aを選んでもBを選んでも、それぞれの先に良いことも悪いこともある。
転職してうまくいくかもしれないし、しなくてもうまくいくかもしれない。
逆に、どっちを選んでも大変なことはある。
正解がないなら、何を選んでもいい。
何を選んでもいいなら、自分で決めていい。
そう思った瞬間、すごく楽になった。
結局、転職した。
新しい職場が最高かと言われたら、別にそうでもない。前より良いこともあるし、前の方が良かったこともある。
でも「自分で選んだ」という事実が、不思議と心を支えている。
正解を探すのをやめたら、不正解を恐れなくなった。
不正解を恐れなくなったら、選べるようになった。
選べるようになったら、動けるようになった。
今もときどき迷う。これで良かったのかな、って。
でも「正解はない。だから自分で決めていい」と思い出すと、少し落ち着く。
正解がない世界は、不安だけど、自由だ。
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