休むのが、怖い。
風邪をひいても、会社に行く。熱があっても、行く。
「休んだら?」
そう言われると、焦る。
休んだら、仕事が溜まる。迷惑がかかる。「あの人いなくても回るね」って思われる。
それが、怖い。
だから、休まない。
思えば、ずっとそうだった。
子どもの頃、熱を出しても学校に行こうとした。
「そんなに頑張らなくていいのよ」
母に言われた。でも、休めなかった。
休んだら、勉強が遅れる。みんなに置いていかれる。
「頑張ってるね、偉いね」
そう言われると、嬉しかった。
頑張ってる私は、価値がある。
頑張ってない私は、どうだろう。
考えたくなかった。
大人になっても、変わらなかった。
残業を断れない。休日出勤も断れない。
「助かるよ、いつもありがとう」
その言葉のために、働いてた。
体がおかしくなったのは、去年の冬。
朝、起きられなくなった。
目は覚めてる。でも、体が動かない。
「行かなきゃ」
頭では分かってる。でも、体が拒否してる。
無理やり起き上がった。めまいがした。吐き気がした。
それでも、会社に行った。
「顔色悪いよ、大丈夫?」
「大丈夫です」
大丈夫じゃなかった。でも、そう言うしかなかった。
倒れたのは、その週の金曜日。
会議中に、目の前が真っ暗になった。
気づいたら、病院のベッドにいた。
「過労です。しばらく休んでください」
医者に言われた。
休む。その言葉が、怖かった。
休んだら、どうなる。私の代わりに誰かがやる。私がいなくても、回る。
私って、いらないんじゃないか。
ベッドの上で、泣いた。
体が壊れたことより、「休まなきゃいけない」ことが辛かった。
一週間、休んだ。
何もできなかった。テレビを見る気力もない。本を読む気力もない。
ただ、天井を見てた。
「私、何やってるんだろう」
頑張れない自分が、情けなかった。
三日目、友達が来た。
「大丈夫?」
「ごめんね、何もできなくて」
なんでか、謝ってた。
「何も、って何?」
「お茶も出せないし、話も面白くないし」
友達が、首を傾げた。
「別に、お茶出してほしくて来たんじゃないよ。あんたに会いたかっただけ」
その言葉が、刺さった。
私に会いたかった。
頑張ってる私じゃなくて、何もできない私に、会いたかった。
そんなこと、あるんだ。
「あんたさ、頑張ってないと不安になるタイプでしょ」
図星だった。
「頑張ってなくても、あんたはあんただよ」
そう言われて、また泣いた。
今度は、違う涙だった。
復帰してから、少しだけ変わった。
定時で帰る日を作った。有給を使った。
最初は怖かった。「サボってる」って思われるんじゃないかって。
でも、誰も何も言わなかった。
私が思ってたほど、みんな私を見てなかった。
それは、悲しいことじゃなかった。
むしろ、楽になった。
頑張ってない私にも、価値がある。
まだ、完全には信じられない。
でも、少しずつ、そう思えるようになってきた。
休んでも、私は私。
何もできなくても、私は私。
当たり前のことなのに、ずっと分からなかった。
もしあなたも、頑張ってないと不安なら。
一回、立ち止まってみてほしい。
頑張ってるから価値があるんじゃない。
あなたがあなただから、価値があるんだよ。
それを忘れないでほしい。
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