どうせ、何をしても無駄。
そう思うようになったのは、いつからだろう。
昔は、違った。
頑張れば報われると思ってた。努力すれば変わると思ってた。
だから、頑張った。
就活、頑張った。落ちた。何十社も落ちた。
やっと受かった会社で、頑張った。評価されなかった。
「もっとこうした方がいい」と言われて、直した。また違うことを言われた。
何が正解か、分からなくなった。
恋愛も頑張った。
好きな人に振り向いてもらおうと、努力した。ダイエットした。おしゃれした。話を聞いた。
結局、振られた。「いい人だけど」って。
いい人じゃ、ダメなんだ。
自分を変えようとした。
本を読んだ。セミナーに行った。新しいことを始めた。
何も変わらなかった。
いや、変わったのかもしれない。でも、状況は変わらなかった。
頑張っても、報われない。
努力しても、結果が出ない。
そういう経験が、積み重なっていった。
ある日、気づいた。
「もう、頑張るの、やめよう」
頑張っても無駄なら、頑張らない方がマシ。
期待しなければ、がっかりしなくて済む。
そう思った。
それから、何もしなくなった。
仕事は最低限。言われたことだけ。それ以上は、やらない。
休日は、ずっと寝てる。何かをする気力がない。
「どこか行こう」と誘われても、「いい」と断る。
行ったって、楽しくない。どうせ疲れるだけ。
友達が言った。
「最近、元気ないね」
「別に」
「なんかあった?」
「何もない」
何もないんだよ。本当に、何もない。
何もないことが、問題なんだけど。
親に言われた。
「もう少し頑張りなさい」
その言葉が、一番きつかった。
頑張って、この結果なんだよ。
頑張ったって、無駄だったんだよ。
それを、分かってもらえない。
「頑張れば変わる」って言う人は、頑張って変われた人だ。
私みたいに、頑張っても変われなかった人の気持ちは、分からない。
カウンセラーに言われた。
「何をしても無駄だと感じるんですね」
「はい」
「それは、学習した結果なんですよ」
「学習?」
「頑張っても報われない経験を繰り返すと、脳が学習するんです。『何をしても無駄だ』って」
そうなんだ。
私がダメなんじゃなくて、脳がそう学習しちゃったんだ。
「だから、新しいことを学習し直す必要があるんです」
「どうやって?」
「小さな成功体験を積むことです。本当に小さなことでいいです」
小さな成功体験。
そう言われても、何をすればいいか分からなかった。
「例えば、朝起きて、カーテンを開ける。それだけでいいです」
そんなこと?
「それができたら、自分を褒めてください。『できた』って」
バカにされてると思った。
でも、やってみた。
朝、目が覚めた。いつもなら、そのまま布団にいる。
今日は、起き上がった。カーテンを開けた。
「できた」
小さな声で言ってみた。
バカみたいだった。でも、少しだけ、何かが動いた気がした。
次の日も、カーテンを開けた。「できた」。
その次の日も。「できた」。
一週間続いた。
「一週間、できた」
それが、少しだけ嬉しかった。
今も、「どうせ無駄」と思うことはある。
でも、「でも、カーテンは開けられた」と思える。
小さなこと。本当に小さなこと。
でも、「できた」がある。
大きなことは、まだ無理。
仕事を頑張ろうとか、恋愛を頑張ろうとか、そんな気力はない。
でも、カーテンは開けられる。
それが、今の私の精一杯。
もしあなたも、「どうせ無駄」と思ってるなら。
それは、あなたのせいじゃない。
今まで頑張って、報われなかった結果、脳がそう学習しただけ。
だから、小さなことから、学習し直せばいい。
本当に小さなことでいい。
カーテンを開ける。水を飲む。顔を洗う。
それができたら、「できた」って言ってみて。
バカみたいに思うかもしれない。
でも、それが、「どうせ無駄」から抜け出す最初の一歩だから。
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