優しくされると、構える。
「何か裏があるんじゃないか」って、つい考えてしまう。
職場の先輩が「大丈夫?手伝おうか」って言ってくれた。普通の言葉。普通の優しさ。
でも私の頭は、すぐに回り始める。
この人、何が目的なんだろう。後で何か頼まれるのかな。借りを作りたくない。
「大丈夫です」って笑顔で返した。本当は全然大丈夫じゃなかったけど。
昔から、こうだった。
母は優しい日と怖い日があった。
優しい日は、お菓子を買ってくれたり、頭を撫でてくれたりした。嬉しかった。
でもその後に、怖い日が来る。
「あんたのために色々してるのに」「誰のおかげで生活できてると思ってるの」
優しさは、請求書付きだった。
だから学んだ。優しくされたら、気をつけろって。あとで何か言われるぞって。
友達付き合いも、そう。
仲良くなりすぎると、怖くなる。この人、いつか変わるんじゃないか。急に怒り出すんじゃないか。
近づきたいけど、近づくのが怖い。
だから一定の距離を保つ。深入りしない。傷つかない場所にいる。
恋愛なんて、もっと無理。
好きな人ができても、「どうせ裏がある」「いつか本性が出る」って思ってしまう。
相手は何も悪くない。ただ優しいだけ。それなのに、私が勝手に警戒して、勝手に距離を取って、勝手に関係を壊す。
何回も繰り返した。
ある時、カウンセラーに言われた。
「あなたは優しさを信じられないんじゃなくて、優しさの後が怖いんだね」
そうだ。優しさ自体が嫌いなわけじゃない。
優しさの後に来る、請求が怖いんだ。
「でもね、請求書付きじゃない優しさも、世の中にはあるんだよ」
頭では分かる。でも体が信じてくれない。
今も、誰かに優しくされると身構える。
でも最近、少しだけ試してる。
「ありがとうございます」って言った後、何も起きないか確認する。
何も起きない。何も請求されない。
あれ、って思う。この人、本当にただ優しいだけだ。
まだ全然信じられない。10回優しくされて、1回くらい「もしかして」って思える程度。
でも、0回よりはマシ。
いつか、優しさをそのまま受け取れる日が来るのかな。
分からない。来ないかもしれない。
でも、来なくても、私は私なりにやっていく。
警戒しながらでも、人と関わっていく。
不格好だけど、それが今の私のやり方。
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