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ずっと誰かの顔色を見てきた

📅 2026-02-02⏱️ 4分✍️ 匿名の観察係
過去顔色機嫌緊張気づき
人の顔色を見るのが、得意になってしまった。 会議で誰かがちょっと眉をひそめる。飲み会で誰かの箸が止まる。電話口で声のトーンが下がる。 全部、分かる。気づいてしまう。 「空気読めるね」って言われることがある。 褒め言葉なんだろうけど、嬉しくない。 これは特技じゃない。生き延びるために身につけた癖。 実家にいた頃、父の機嫌を読むのが日課だった。 帰ってきた時の足音。ドアの閉め方。「ただいま」の声のトーン。 それで今日の父が分かる。機嫌がいいか、悪いか。 悪い日は、姿を消す。部屋にこもる。息を殺して、嵐が過ぎるのを待つ。 母も読む対象だった。 母は、父に怒られると私に当たった。だから父の機嫌と、母の機嫌、両方見てないといけなかった。 家の中で、一番安全な場所を探す。誰にも見つからない場所。誰の機嫌も損ねない場所。 それが毎日だった。 大人になって、家を出た。 でも癖は抜けない。 上司の機嫌を見る。同僚の機嫌を見る。友達の機嫌を見る。恋人の機嫌を見る。 誰かが不機嫌だと、「私のせいかな」って思う。 違うって分かってても、体が反応する。緊張して、萎縮して、小さくなる。 飲み会の帰り道、いつも反省会をする。 あの時の発言、大丈夫だったかな。変な空気にしてないかな。誰か怒ってないかな。 ぐるぐる考えて、家に着く頃にはぐったりしてる。 友達に「考えすぎだよ」って言われたことがある。 そうなんだろうな。分かってる。 でも、考えないと不安なんだ。見張ってないと、怖いんだ。 いつ誰が怒り出すか分からない世界で生きてきたから。 最近、気づいたことがある。 私は「誰かの機嫌を見てる」んじゃなくて、「危険を察知しようとしてる」んだって。 それは昔の私が、生き延びるためにやってたこと。 間違ってなかった。あの家では、必要な能力だった。 でも今は、そこまで見張らなくてもいい場所にいる。 誰も急に怒鳴らない。誰も物を投げない。 安全なんだよって、自分に言い聞かせてる。 まだ体は信じてくれないけど。 電車の中で、前に座ってる人の表情を、つい見てしまう自分がいる。 「あ、またやってる」って気づく。 気づくだけ。それでいい。今はそれでいい。 いつかこの癖が薄れる日が来るのかな。 来なくても、私はやっていく。 見張りながらでも、生きていく。 --- *© 2026 匿名の観察係*