朝、アラームが鳴る。
目は開いた。でも、体が動かない。
「行きたくない」
毎朝、この言葉が最初に浮かぶ。
仕事が嫌いかって聞かれたら、よくわからない。嫌いじゃない日もある。やりがいを感じる瞬間だって、たまにはある。
でも、朝になると、行きたくない。
布団の中で、天井を見る。時計を見る。あと30分で家を出なきゃいけない。わかってる。わかってるのに、動けない。
「具合が悪いって、電話しようか」
毎朝、その言葉が頭をよぎる。
でも、電話しない。昨日も一昨日も行ったんだから、今日も行ける。そう自分に言い聞かせて、重い体を起こす。
シャワーを浴びて、服を着る。鏡の前に立つ。「大丈夫」って、目を見て言ってみる。全然大丈夫じゃない顔が映ってる。
駅までの道、足が重い。イヤホンをつけて、音楽を聴く。何も聴こえてないけど、外の音を遮断するだけで少しマシになる。
電車に乗る。満員電車。人の匂い、体温、溜め息。ここにいる人たちも、行きたくないのかな。そんなことを考える。
会社に着くと、不思議なことに、少しだけ楽になる。
「おはようございます」
そう言うと、体が仕事モードに切り替わる。慣れなのか、諦めなのか、よくわからない。
でも、ふとした瞬間に、また思う。
「帰りたい」
会議中。パソコンの前。トイレに立った時。ふとした瞬間に、帰りたくなる。
別に何かあったわけじゃない。上司にひどいことを言われたわけでも、ミスをしたわけでもない。ただ、ここにいることが、しんどい。
転職を考えたことは、何度もある。
求人サイトを開いて、スクロールして、閉じる。その繰り返し。
「今より良くなる保証なんてない」
「辞めたら、お金はどうする」
「もう少し頑張れるんじゃないか」
そうやって自分を説得して、また明日も行く。
ある日、帰りの電車で泣いた。
理由はわからない。何もなかった一日。ただ、疲れていた。
隣の人が、ちらっとこちらを見て、すぐに目をそらした。
家に帰って、靴も脱がずに玄関に座り込んだ。
「いつまで、これが続くんだろう」
答えは、出ない。
今も、毎朝「行きたくない」と思う。
でも、行っている。
それが強さなのか、惰性なのか、自分でもわからない。
明日の朝も、アラームが鳴る。
また「行きたくない」って思う。
でも、たぶん、行く。
行けなかった日は、その時考える。
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