夜中の3時。
また、起きてしまった。
目が覚めた瞬間、わかる。ああ、今日もダメだ。もう眠れない。
隣の部屋から、冷蔵庫のブーンって音がする。外は静かで、たまに車が通る音がする。
この時間が、一番怖い。
昼間は平気なのに、夜になると、頭が勝手に動き出す。
明日の仕事のこと。言わなきゃよかったあの一言。返信してないメール。来月の支払い。5年後のこと。10年後のこと。
考えても仕方ないことばかり。わかってる。でも、止められない。
布団の中で寝返りを打つ。右向き、左向き、仰向け。どの体勢でも落ち着かない。
スマホを手に取る。見ちゃいけないって、わかってる。でも、見る。
SNSを開く。誰かの楽しそうな投稿。深夜なのに「いいね」がついてる。みんな起きてるのかな。それとも、私だけがこんな時間に目を覚ましてるのかな。
時計を見る。3時28分。
「あと3時間で起きなきゃ」
そう思うと、余計に焦る。焦ると、もっと眠れない。
昔は、眠れないことがなかった。布団に入れば5分で眠れた。いつから、こうなったんだろう。
はっきりした原因は、わからない。仕事が忙しくなった頃から、かもしれない。彼と別れた頃から、かもしれない。きっかけは一つじゃない。色々なことが積み重なって、気づいたら、眠れなくなっていた。
病院に行ったことがある。
「睡眠導入剤、出しておきますね」
薬を飲めば、確かに眠れた。でも、朝がぼんやりする。頭に霧がかかったみたいになる。それが嫌で、飲んだり飲まなかったりを繰り返した。
今は、自分なりのやり方を見つけた。
眠れない夜は、まず布団から出る。無理に寝ようとしない。
台所に行って、白湯を作る。電気ケトルがカチッと鳴る音。お湯をカップに注ぐ音。その小さな音が、なんだか落ち着く。
白湯を持って、窓辺に座る。外を見る。街灯がぼんやり光ってる。誰もいない道路。
この時間の世界は、静かで、優しい。
昼間の世界は忙しくて、騒がしくて、気を遣うことばかり。でも深夜は、誰にも何も求められない。ただ、自分だけの時間。
白湯を飲みながら、何も考えない。考えそうになったら、白湯の温かさに集中する。手のひらに伝わる熱。喉を通る温かさ。
それだけでいい。
30分くらいそうしてると、少しだけ眠気が来ることがある。来ない時もある。
来たら、布団に戻る。来なかったら、もう少し窓辺にいる。
朝が来る。眠れなかった日の朝は、重い。でも、昨日よりほんの少しだけマシ。そう思うようにしている。
眠れない夜は、なくならないと思う。
完全に治すことは、たぶんできない。でも、眠れない夜との付き合い方は、少しずつ覚えた。
怖がらないこと。焦らないこと。
眠れないなら、起きていればいい。その時間を、自分のために使えばいい。
深夜3時の世界は、思ったより悪くない。
もし今、眠れない夜を過ごしているなら。
大丈夫。あなただけじゃない。
今この瞬間も、どこかで誰かが、同じように天井を見つめている。
一人じゃないよ。
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