おにぎり二つ
ふつう・4分

おにぎり二つ:体がだるい。それだけなのに

匿名のだるい人・4分・ふつう

体がだるい。

熱はない。風邪でもない。どこが痛いわけでもない。

ただ、だるい。

朝起きた時から、もう疲れてる。8時間寝たのに。昨日、特に何もしてないのに。

重い。体が、鉛みたいに重い。

これが毎日続くと、自分がおかしいんじゃないかって思い始める。

「怠けてるだけじゃないの?」

その声は、自分の中から聞こえてくる。

病院に行った。

血液検査も、尿検査も、異常なし。

「特に問題ないですね。疲れが溜まってるのかもしれません。しっかり休んでください」

しっかり休んでる。休んでるのに、だるい。だから来たのに。

帰り道、余計に落ち込んだ。体は何ともないのに、こんなにだるい。じゃあ、これは気のせいなのか。自分が弱いだけなのか。

会社では、なんとかやれている。たぶん。周りから見たら、普通に見えてると思う。

でも、家に帰ると、玄関で座り込む。靴を脱ぐのすら、しんどい。

ソファに倒れ込んで、そのまま2時間動けない。テレビをつける気力もない。スマホを見る気力もない。ただ、天井を見てる。

「ご飯、作らなきゃ」

わかってる。でも、動けない。

結局、コンビニのおにぎりを2つ食べて、風呂に入らずに寝る。そんな日が、週に3回はある。

友達に「最近、だるくてさ」と言ったことがある。

「わかるー。私も最近疲れてる」

軽い返事。みんな疲れてる。みんなだるい。じゃあ、私のこのだるさも普通なのか。

でも、普通のだるさって、こんなに重いものなのか。

週末、何もできない。

「せっかくの休みだし、どこか出かけよう」って思うのは金曜の夜まで。

土曜の朝、目が覚めると、もう無理。今日は寝てよう。明日出かければいい。

日曜の朝、同じことを思う。結局、どこにも行かない。

月曜の朝、「何もしなかった週末」への罪悪感を抱えて、また会社に行く。

いつからこうなったんだろう。

思い返すと、じわじわだった。去年の秋くらいから、少しずつ。最初は「季節の変わり目だから」って思ってた。冬になったら「寒いから」って思った。春になっても治らなくて、夏になっても治らなくて、気づいたらもう1年経ってた。

あるとき、ネットで読んだ。

「心の疲れは、体に出る」

ストレスが溜まると、体が先にサインを出すことがあるらしい。だるさ、重さ、疲れが取れない感じ。それは体の不調じゃなくて、心が限界に近づいてるサインだと。

最初は信じられなかった。心が疲れてるって、自覚がない。毎日、普通に生活してる。泣いてるわけでも、落ち込んでるわけでもない。

でも、「普通に生活してる」こと自体が、無理をしてたのかもしれない。

笑いたくない時に笑って。言いたいことを飲み込んで。大丈夫じゃない時に「大丈夫」って言って。

その全部が、体に溜まってたのかもしれない。

今も、だるい。

劇的に良くなったわけじゃない。でも、一つだけ変えたことがある。

だるい自分を、責めるのをやめた。

「だるいなら、だるいでいい」

それだけ。

コンビニのおにぎりで済ませた日も、風呂に入れなかった日も、週末何もできなかった日も。「今日はそういう日だった」で終わらせる。

それだけで、ほんの少し、楽になった。

体がだるい。それだけなのに、つらい。

その「つらい」は、本物だ。気のせいじゃない。怠けでもない。

だるい日は、だるいまま過ごしていい。

それは、あなたの体が「少し休もう」って言ってるだけだから。

― 匿名のだるい人

同じ棚から、もう一冊

研究所道具屋猫の国の地図