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🌧️

雨の日は、窓を少しだけ開ける

📅 2026-03-09⏱️ 3分✍️ 匿名の雨待ち人
静寂呼吸安心
雨が降ると、少しだけ嬉しい。 誰にも言ったことはないけど、雨が降ると少しだけほっとする。 今日は外に出なくていいな、と思える。 予定をキャンセルする口実にもなる。 「雨だからさ」のひと言で、許される気がする。 だから雨の日は、窓を5センチだけ開ける。 ざあざあ降りの日は、部屋の中まで水の匂いがする。 しとしと降りの日は、耳を澄まさないと聞こえないくらいの音が、ずっと続いている。 どちらも好きだ。 雨音って不思議で、聞いていると何も考えなくなる。 普段の頭の中は、やらなきゃいけないこと、言えなかったこと、失敗したこと、そういうものがぐるぐる回っている。 でも雨音を聞いていると、それが少しずつ薄くなる。 消えるわけじゃない。薄くなるだけ。 でも、それだけで十分だと思う。 ソファに座って、膝にブランケットをかけて、窓の外を見る。 見ているようで、何も見ていない。 ただ水滴が窓ガラスを伝っていくのを目で追っているだけ。 どの水滴が一番下まで先にたどり着くか、なんとなく賭けてみたりする。 誰とも賭けていないけど。 1時間くらい、そうしていることがある。 何も生まれない。何も進まない。 スマホも触っていないから、誰ともつながっていない。 ただ雨と、自分だけ。 前に友達に「雨の日、何してるの」と聞かれて、「雨の音聞いてる」と答えたら、少し間があった。 「……え、それだけ?」って。 うん、それだけ。 でもその「それだけ」が、私にはすごく大事な時間になっている。 雨が止むと、少しだけ寂しい。 でも明日また降るかもしれない。 天気予報で傘マークを見つけると、ちょっとだけ口角が上がる。 何かを得るための時間じゃなくて、何も失わない時間。 雨の日の窓際は、私にとってそういう場所だ。 今日も雨が降っている。 窓を5センチ開けて、ブランケットを膝にかけた。 今日も何もしない。 それでいい。 --- *© 2026 匿名の雨待ち人*