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知らない街の地図を、ぼんやり眺める

📅 2026-03-09⏱️ 3分✍️ 匿名の地図好き
地図空想逃避静かな時間
行ったことのない街の地図を、ぼんやり眺めるのが好きだ。 スマホじゃなくて、紙の地図。 古本屋で見つけた外国の道路地図とか、旅行ガイドの巻末についてる簡易地図とか。 読めない文字で書かれた通りの名前を、指でなぞる。 この道をまっすぐ行くと、どこに出るんだろう。 この川を渡ったら、何があるんだろう。 この小さな四角は、誰かの家だろうか。 想像するだけ。実際に行くわけじゃない。 行く予定もない。お金もないし、パスポートも期限が切れている。 でも、それでいい。 地図を眺めている間、私はここにいない。 会社のデスクにも、通勤電車にも、散らかった部屋にもいない。 知らない街の、知らない角を曲がっている。 これを始めたのは、ある夜のことだった。 眠れなくて、本棚を漁っていたら、昔買ったヨーロッパの地図帳が出てきた。 パラパラめくっていたら、いつの間にか2時間経っていた。 その間、一度も嫌なことを考えなかった。 それからは、古本屋に行くと地図のコーナーを覗くようになった。 200円くらいで、知らない世界が手に入る。 一番好きなのは、北欧のどこかの島の地図だ。 島の端っこに、小さな灯台のマークがある。 そこに住んでいる人がいるのかいないのか、わからない。 でもなんとなく、一人で暮らしている人がいてほしい。 朝、灯台の階段を降りて、海を見て、コーヒーを飲んでいてほしい。 勝手に物語を作って、勝手に安心している。 馬鹿みたいだと思う。でも、この馬鹿みたいな時間が好きだ。 現実には、明日も仕事がある。 満員電車に乗って、パソコンに向かって、同じ一日を過ごす。 でも鞄の中に、折りたたんだ地図が一枚入っている。 昼休みにそれを広げて、指で道をなぞれば、一瞬だけどこかに行ける。 行けない場所があるから、想像が生まれる。 届かないものがあるから、夢を見られる。 そういうことにしておく。 今夜も、知らない街の地図を広げる。 どこに行こうか。どこにも行かないけど。 --- *© 2026 匿名の地図好き*