一人で映画館に行った。32年生きてきて、初めて。
映画は好きだ。でもずっと「映画は誰かと行くもの」だと思ってた。
友達と、彼氏と、家族と。
一人で行くのは寂しい人がすることだと、なんとなく。
でも最近、見たい映画があった。
ちょっとマイナーなやつ。友達に聞いたら「何それ」って言われた。
上映期間が残り1週間。
誘える人がいない。でも見たい。
迷った。3日くらい迷った。
水曜日の朝、勢いでチケットを買った。平日の昼間、一番安い時間帯。
「1名」ってボタンを押す指が、ちょっと震えた。
映画館に着いたら、思ったより人がいた。
しかも一人の人、けっこういる。スーツのおじさん、大学生っぽい女の子、おばあちゃん。
なんだ、普通のことなんだ。
席に座って、ポップコーンを膝に置いた。Mサイズ。一人だからLは多い。
暗くなって、予告が始まって、本編が始まった。
2時間後、エンドロールが流れた時、泣いていた。
映画が良かったのはもちろんある。
でもそれだけじゃなくて、なんていうか、「自分で決めて、自分で来て、自分で感動してる」ということに、じーんときた。
誰かに合わせなくていい。
感想を言わなくていい。
泣いても笑っても、誰にも見られてない。
この感動は、まるごと自分だけのもの。
映画館を出て、一人でカフェに入った。
コーヒーを飲みながら、さっきの映画のことをぼんやり考えた。
誰にも邪魔されない。この時間も込みで、映画だった。
帰り道、思った。
一人って、寂しいことだと思ってた。
でも違った。一人って、自由だった。
それから月に1回、一人映画に行くようになった。
見たいものを、見たい時に、見に行く。
当たり前のことなのに、すごく贅沢に感じる。
来週も気になってるやつがある。
今度はLサイズのポップコーンにしようかな。一人だけど。
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*© 2026 匿名の一人映画デビュー*