コンビニのレジで「袋いりますか」と聞かれて、「大丈夫です」と答えた。
それが、今日はじめて声を出した瞬間だった。
土曜日の午後3時。
スマホを見る。通知はニュースアプリだけ。LINEは昨日の既読で止まっている。誰のでもない。配送業者からの「お届け完了」。
部屋に帰って、買ってきた弁当を食べた。テレビはつけない。つけると寂しさがはっきりしちゃうから。
無音のほうがまし。無音なら、ひとりなのは自分で選んでいる気がする。
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久しぶりに飲み会に行った。
大学時代の友達。4人。みんな変わってなくて、でもみんな変わっていた。
子どもの写真を見せてくる人。転職した話をする人。家を買った人。
私は笑って「すごいね」と言った。何回言ったか分からない。
「そっちは最近どう?」
「うーん、まあぼちぼち」
それ以上聞かれないことに、安心した。聞かれたかった。どっちか分からない。
二次会は断った。「明日早いから」って。嘘だ。明日は休みで、何もない。
駅のホームで電車を待ちながら、さっきまでの笑い声を思い出す。
楽しかった。楽しかったはずなのに、帰り道がいちばん寂しい。
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夜中の2時に目が覚めた。
天井を見ている。何も考えていない。何も考えたくない。
ふと、声に出してみた。
「誰かいる?」
返事はない。当たり前だ。一人暮らしなんだから。
でも、声に出したかった。自分の声を聞きたかった。この部屋に、誰かがいる証拠がほしかった。
それが自分しかいなくても。
エアコンの音だけが返ってくる。
なんだろう。泣きたいわけじゃない。死にたいわけでもない。
ただ、ここに自分がいることを、誰かに知っていてほしい。
それだけの話。
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