袋いりますか
ふつう・3分

袋いりますか:ひとりの音

匿名のひとり・3分・ふつう

コンビニのレジで「袋いりますか」と聞かれて、「大丈夫です」と答えた。

それが、今日はじめて声を出した瞬間だった。

土曜日の午後3時。

スマホを見る。通知はニュースアプリだけ。LINEは昨日の既読で止まっている。誰のでもない。配送業者からの「お届け完了」。

部屋に帰って、買ってきた弁当を食べた。テレビはつけない。つけると寂しさがはっきりしちゃうから。

無音のほうがまし。無音なら、ひとりなのは自分で選んでいる気がする。

*

久しぶりに飲み会に行った。

大学時代の友達。4人。みんな変わってなくて、でもみんな変わっていた。

子どもの写真を見せてくる人。転職した話をする人。家を買った人。

私は笑って「すごいね」と言った。何回言ったか分からない。

「そっちは最近どう?」

「うーん、まあぼちぼち」

それ以上聞かれないことに、安心した。聞かれたかった。どっちか分からない。

二次会は断った。「明日早いから」って。嘘だ。明日は休みで、何もない。

駅のホームで電車を待ちながら、さっきまでの笑い声を思い出す。

楽しかった。楽しかったはずなのに、帰り道がいちばん寂しい。

*

夜中の2時に目が覚めた。

天井を見ている。何も考えていない。何も考えたくない。

ふと、声に出してみた。

「誰かいる?」

返事はない。当たり前だ。一人暮らしなんだから。

でも、声に出したかった。自分の声を聞きたかった。この部屋に、誰かがいる証拠がほしかった。

それが自分しかいなくても。

エアコンの音だけが返ってくる。

なんだろう。泣きたいわけじゃない。死にたいわけでもない。

ただ、ここに自分がいることを、誰かに知っていてほしい。

それだけの話。

― 匿名のひとり

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