レジの小銭
ずっしり・4分

レジの小銭:ごめんね、が止まらない

匿名の謝罪者・4分・ずっしり

今日も「ごめんなさい」を8回言った。

数えてるわけじゃない。でも、なんとなく分かる。朝、電車でぶつかった人に。昼、頼まれた仕事に少し時間がかかって。夕方、コンビニのレジで小銭をもたついて。

全部、謝るほどのことじゃない。分かってる。

でも口が先に動く。「すみません」「ごめんなさい」「申し訳ないです」。

存在していることが、迷惑な気がしてる。

3ヶ月前。

友達に「あなたって、謝りすぎだよ」と言われた。

笑って「そうかな、ごめんね」と返した。

友達が黙った。「……今のも謝ることじゃないよ」

その通りだと思った。でも、やめ方が分からない。

1年前。

職場で大きなミスをした。自分のせいで、チーム全体の納期がずれた。

上司は「気にするな」と言ってくれた。同僚も「誰でもあるよ」とフォローしてくれた。

優しかった。みんな優しかった。

でもその優しさが、余計に刺さった。怒られたほうが楽だった。許されると、自分で自分を許せない分だけ、罪悪感が膨らむ。

あの日から、私の「ごめんなさい」は増えた気がする。

5年前。

母に言われたことがある。

「あんたのせいで、お父さんとお母さんは離婚したの」

嘘だと思う。今なら分かる。たぶん、母もいっぱいいっぱいだったんだと思う。

でもあの言葉は、12歳の私の中にずっと残った。

私のせい。私がいなければ。私がもっとちゃんとしていれば。

今日の9回目の「ごめんなさい」は、家に帰って、猫に言った。

「遅くなってごめんね」

猫はにゃあと鳴いて、足元に擦り寄ってきた。

猫は私を許すとか許さないとか、考えてない。ただ、おかえりって言ってるだけ。

それが少しだけ、楽だった。

― 匿名の謝罪者

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