あの夜の私へ。
消えたかったんだよね。
知ってるよ。覚えてる。あの夜のこと、全部。
布団の中で丸くなって、「消えたい」って何回もつぶやいてた。
死にたかったのかな。たぶん、ちょっと違う。
この痛みを止めたい。この重さから降りたい。朝が来なければいいのに。
「消えたい」は、そういう意味だった。
自分がいなくなれば、この苦しさもなくなると思ってた。
あの夜、何が私を止めたのか、正直よく分からない。
疲れすぎて、何かをする気力すらなかったのかもしれない。
朝が来て、光が差して、なんとなく起きて、なんとなく水を飲んだ。
それだけ。
消えたかったのに、消えなかった。理由はない。ただ、朝が来ただけ。
あの夜から2年経った。
正直に言う。
「生きてて良かった」って、毎日は思えない。
映画みたいに、朝日を見て感動する日は来なかった。
でも、昨日、仕事の帰りにたい焼きを買った。あんこのやつ。食べながら歩いた。
おいしかった。
それだけなんだけど。
消えたかったあの夜の私は、2年後にたい焼きを食べながら歩いてる自分を、想像できなかったと思う。
生きてて良かったかは、まだ分からない。
でも、たい焼きはおいしかった。それは本当。
あの夜、朝まで持ちこたえてくれて、ありがとう。
大した理由じゃなくてよかった。
今の私より。
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