資料を配る係
ふつう・4分

資料を配る係:あの子はできるのに

匿名の比べる人・4分・ふつう

同期のあの子は、私と同じ年に入社した。

同じ部署、同じ仕事。スタートラインは同じだった。

3年経った今、あの子は主任になった。私はまだ平社員。

あの子は会議で堂々と発言する。私は資料を配る係。

あの子のデスクにはチームのみんなが集まる。私のデスクには誰も来ない。

比べるなって分かってる。人それぞれだって分かってる。

でも、比べちゃう。

隣にいるから。毎日見えるから。

あの子が昇進した日、「おめでとう」と言った。

本心だった。半分は。

もう半分は、ぐちゃぐちゃだった。

嫉妬。悔しさ。惨めさ。そして、そんなことを思ってしまう自分への嫌悪感。

友達の成功を喜べない自分は、性格が悪いんだと思った。

家に帰って、泣いた。あの子のためじゃなくて、自分のために。

あの子は知らないだろう。

私がトイレで泣いたこと。「なんで私だけ」って思った夜のこと。

あの子の名前をSNSで検索して、充実した投稿を見て、スマホを伏せたこと。

あの子は何も悪くない。それが、いちばんつらい。

誰も悪くないのに、こんなに苦しいのは、なんでだろう。

最近、気づいたことがある。

私が比べてるのは、「あの子と私」じゃなくて、「なれたはずの私と、今の私」なのかもしれない。

あの子は関係ない。たまたま、隣にいただけ。

もしあの子がいなくても、私はきっと、別の誰かと比べてた。

比べるのをやめる方法は、まだ分からない。

でも、何と比べてるのかが少し見えただけで、ほんの少しだけ息がしやすくなった。

気がするだけかもしれないけど。

― 匿名の比べる人

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