← 図書館へ戻る
📱

ある欠勤者の記録 ― 二度目の欠勤届

📅 2026-03-26⏱️ 4分✍️ 匿名の欠勤者
連載ある欠勤者の記録罪悪感困惑欠勤
📖 ある欠勤者の記録2/5
あの日から2週間、普通に出勤した。 普通に朝礼に出て、普通にメールを返して、普通に電話を取った。 「もう大丈夫?」と上司に聞かれて、「はい、すみませんでした」と笑った。 大丈夫。大丈夫なはず。 だって、あの日は、たまたま調子が悪かっただけ。そういう日もある。みんなある。 そう思おうとした。2週間、うまくいった。 3週目の月曜日、また動けなくなった。 今度は、ブラウスの前まで行けなかった。アラームを止めた瞬間に、身体が布団に沈んだ。 前回は、「何かがおかしい」と思った。 今回は、「また来た」と思った。 それが怖かった。「また」があるということは、これは「たまたま」じゃないということだから。 スマホを持った。上司のトーク画面を開いた。2週間前のやりとりが見える。「体調不良のため」「了解です。お大事に」。 同じことを、また送るのか。 2週間前と一字一句同じ文面を打った。指が震えた。 「おはようございます。体調不良のため、本日お休みをいただきたいです。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」 前回と一字一句同じ。変えたほうがいいかもしれない。でも、変えたら「前回と違う言い訳を考えた」みたいに見えるかもしれない。 考えすぎだと分かってる。でも、考えることを止められない。 送信した。 上司の返信は、今回も早かった。「了解です。続くようなら無理しないでくださいね」 「続くようなら」。 その言葉が、刺さった。上司は優しく言ってくれてる。でも、「続いてるよね」と気づかれてるということだ。 お昼頃、同期からLINEが来た。 「大丈夫?」 「うん、ちょっと風邪気味で。明日は行くよ」 嘘をついた。風邪じゃない。何なのか自分でも分からないけど、風邪じゃないことだけは分かる。 同期は「お大事に〜!」とスタンプを送ってきた。猫のスタンプ。 返信する手が止まった。 同期は今、私の分の仕事をしてくれてるんだろうな。月末の集計、取引先への連絡、午後の会議の資料。全部、誰かがやってくれてる。 私がいなくても、仕事は回る。 それが、ありがたいのか、悲しいのか、分からなかった。 夕方になって、布団の中でスマホを見ていた。会社のグループチャットが動いてる。読む勇気がなくて、通知だけ眺めていた。 明日は行こう。 前回もそう思った。前回は、行けた。 今回は、分からない。 明日の朝、アラームが鳴った時、私の身体がどっちに動くか、自分でも予測できない。 それがいちばん怖い。自分のことなのに、自分で分からない。 --- *© 2026 匿名の欠勤者*
ある欠勤者の記録