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ある欠勤者の記録 ― 休職3ヶ月目の散歩

📅 2026-03-31⏱️ 4分✍️ 匿名の欠勤者
連載ある欠勤者の記録希望散歩休職回復
📖 ある欠勤者の記録4/5
散歩を始めたのは、先生に言われたからだ。 「毎日じゃなくていいから、少し外を歩いてみてください」 最初の1ヶ月は、ほとんど外に出なかった。カーテンを開けるのがやっとだった。 2ヶ月目に、コンビニまで行けるようになった。往復5分。それだけで疲れて、帰って寝た。 3ヶ月目の今、30分くらい歩けるようになった。 今日は、いつもと違う道を歩いてみた。 住宅街を抜けると、小さい公園があった。知らなかった。2年住んでるのに。 ベンチに座った。平日の昼間の公園は空いてる。おじいさんが一人、鳩にパンをあげてた。小さい子を連れたお母さんが、砂場のところにいた。 平日の昼間に公園にいる大人は、みんなそれぞれの事情がある。おじいさんは退職した人かもしれない。お母さんは育休中かもしれない。私は休職中。 誰も私に「なんでここにいるの」とは聞かない。 それが、ありがたかった。 風が気持ちよかった。3月の風。まだ冷たいけど、冬とは違う冷たさ。 こういうことを感じられるようになったんだ、と思った。 休職し始めた頃は、何も感じなかった。天気も温度も、どうでもよかった。 今は、風が冷たいと「冷たいな」と思える。桜のつぼみを見て「もうすぐ咲くな」と思える。 それだけなんだけど。 帰り道、駅の前を通った。 改札から出てくる人たちを見た。スーツの人。リュックを背負った人。早足で歩いていく人。 3ヶ月前の私も、あの中にいた。 ふと、罪悪感が押し寄せた。 みんな働いてる。みんな頑張ってる。私は、公園のベンチに座ってた。 同期から、先週LINEが来てた。「元気? 無理しないでね」。返信したけど、何を書いていいか分からなくて、「ありがとう、ぼちぼちやってるよ」と送った。 ぼちぼち。便利な言葉。何も言ってないのに、何か言った気になれる。 同期は今も、私の分の仕事をしてくれてるんだろうか。もう引き継がれて、私のことなんか忘れてるかもしれない。 どっちが辛いか分からない。 家に帰って、靴を脱いだ。 冷蔵庫を開けて、麦茶を飲んだ。 今日は30分、歩けた。 それだけを、今日の成果にしよう。 明日は歩けないかもしれない。でも、今日歩けたことは消えない。 先生はそう言ってた。「できた日のことを覚えておいてくださいね」って。 覚えておく。3月の、風がちょっと冷たい日に、知らない公園で、ベンチに座ったこと。 それだけのことが、今の私には十分大きい。 --- *© 2026 匿名の欠勤者*
ある欠勤者の記録