おでんの発注
ふつう・4分

おでんの発注:夜のコンビニバイト、5年目

匿名の店員・4分・ふつう

深夜1時から朝6時まで。週5日。

コンビニの夜勤バイト、もう5年続けてる。

大学を出て、就職して、3年で辞めた。「向いてない」って自分でもわかった。人と話すのが苦手。プレッシャーに弱い。会議で発言できない。

それから、いくつか仕事を転々とした。どれも続かなかった。

30歳のとき、このコンビニバイトを始めた。最初は「つなぎ」のつもりだった。次の仕事が見つかるまでの。

でも、続いてる。5年も。

なんでか?楽だから。

夜中のコンビニは、そんなに客が来ない。来ても、酔っ払いか、タクシー運転手か、夜勤明けの人か。みんな疲れてて、話しかけてこない。レジ打って、「ありがとうございます」って言うだけ。

品出しして、掃除して、発注して。やることは決まってる。マニュアル通り。それが、私には合ってた。

昼間の社会に、私は居場所がなかった。でも、夜の世界には、なんとなく居場所がある気がする。

みんな、それぞれの理由で夜中に起きてる。昼間の世界から、ちょっとずれてる人たち。私も、そのうちの一人。

時給は安い。1000円ちょっと。でも、家賃と食費くらいは稼げる。贅沢はできないけど、生きていける。

友達はいない。恋人もいない。家族とも疎遠。

でも、寂しくない。いや、嘘。寂しい。でも、それでもいいって思えてる。

昼間の世界で頑張って、疲れて、潰れるよりは。夜の世界で、静かに、細々と生きる方が、私には合ってる。

「もっと頑張れ」って言われたこともある。「もったいない」「まだ若いのに」って。

でも、頑張りたくない。頑張って、何になる?昇進?出世?結婚?そんなの、いらない。

私は、ただ生きていたいだけ。それ以上でも、それ以下でもない。

先週、常連の客が言った。「いつもありがとうね」って。

嬉しかった。こんな私でも、誰かの役に立ってる。そう思えた。

夜のコンビニバイト、5年目。これからも、たぶん続ける。

いつまで?わからない。でも、今はこれでいい。

今夜の発注は、おでんの季節の始まりのぶん。ちょっと多めに入れておいた。

寒くなると、夜の客が、少しだけ増える。

― 匿名の店員

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