ウインナー
ずっしり・3分

ウインナー:スーパーの試食を、3回食べた日

匿名の通行人・3分・ずっしり

給料日まで、あと5日。財布には、342円。

冷蔵庫には、何もない。米も、ない。

お腹が、空いた。

仕事帰り、スーパーに寄った。買うためじゃない。試食コーナーがあるから。

ウインナーの試食。小さいの、一つ。店員さんが「どうぞ」って言った。「ありがとうございます」って受け取った。

美味しかった。もっと食べたかった。

10分待った。別の客が試食してる間。それから、もう一度、試食コーナーに行った。

「もう一ついいですか?」って聞けなかった。だから、黙って取った。

店員さんは気づいてた。でも、何も言わなかった。

もう一個、食べた。

それでも足りなかった。

また10分待った。今度は別の試食コーナーに行った。チーズの試食。これも取った。

3回。試食を、3回食べた。

惨めだった。恥ずかしかった。でも、お腹が空いてた。

家に帰った。水を飲んだ。それで、お腹を膨らませた。

布団に入った。眠れなかった。

「なんで、こんなことになったんだろう」

給料は安い。家賃を払ったら、ほとんど残らない。食費を削って、なんとか生きてる。

親には頼れない。友達もいない。誰にも、言えない。

「試食を3回食べた」なんて、誰に言える?笑われる。軽蔑される。

でも、生きるためだった。

次の日も、スーパーに行った。今度は試食を2回だけにした。少しだけ、罪悪感が軽くなった気がした。

給料日が来た。少しだけ、食べ物を買った。

でも、また来月、同じことをするかもしれない。

これが、私の現実。

恥ずかしい。情けない。でも、これが私だ。

完璧な人間なんて、いない。みんな、どこかで誰かに迷惑をかけて、ズルをして、生きてる。

私は、試食を3回食べた。それで、なんとか生き延びた。

許せるか?自分を。

まだ、わからない。でも、死ぬよりはマシだった。

明日も、生きる。どうやってか、わからないけど。

でも、生きる。

― 匿名の通行人

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