青と緑
そっと・4分

青と緑:美術館で、3時間立ち尽くした

匿名の鑑賞者・4分・そっと

あの絵の前で、3時間立ち尽くした。

美術館に行ったのは、久しぶりだった。何年ぶりだろう。仕事に追われて、そんな余裕なんてなかった。

でも、その日は違った。仕事を休んだ。理由は、特にない。ただ、行きたくなかった。

朝、目が覚めて、「今日は無理だ」って思った。会社に電話して、「体調不良で」って伝えた。

家にいても、何もする気が起きなかった。テレビを見ても、内容が頭に入ってこない。

ふと、外に出た。どこに行くでもなく、歩いた。

気づいたら、美術館の前にいた。

入館料、1500円。高いと思った。でも、入った。

館内は、静かだった。平日の昼間。人は少ない。

適当に歩いた。現代アートとか、よくわからない。でも、なんとなく見て回った。

そして、その絵に出会った。

大きな絵だった。青と緑の、抽象画。タイトルは忘れた。作者の名前も覚えてない。

でも、その絵を見た瞬間、足が止まった。

何だろう。この感覚。

胸の奥が、ざわざわした。涙が出そうになった。理由はわからない。ただ、その絵を見ていると、何かが溢れてきた。

ベンチに座った。絵を、じっと見た。

色の重なり。筆のタッチ。光の当たり方。見れば見るほど、いろんなものが見えてきた。

1時間が過ぎた。でも、まだ動けなかった。

周りの人が、来ては去っていく。私だけが、そこに座り続けていた。

警備員が心配そうに見ていた。「大丈夫ですか?」って声をかけられそうだった。でも、かけられなかった。

2時間が過ぎた。

何を考えていたんだろう。仕事のこと。人間関係のこと。将来のこと。いろんなことが頭をよぎった。でも、何も答えは出なかった。

ただ、その絵を見ているだけで、心が落ち着いた。

3時間が過ぎた。

ようやく、立ち上がった。足が、少し痺れていた。

もう一度、絵を見た。「ありがとう」って、心の中で言った。

美術館を出た。外は、まだ明るかった。

家に帰った。不思議と、少しだけ元気が出ていた。

あの絵が、何を表しているのか、わからない。でも、わからなくていい。

ただ、あの絵に出会えて、よかった。あの3時間があって、よかった。

仕事を休んで、美術館に行った。それは「無駄な時間」だったかもしれない。

でも、私にとっては、必要な時間だった。

また、あの美術館に行こうと思う。あの絵に、会いに行こうと思う。

そして、また3時間、立ち尽くすかもしれない。

それでいい。

― 匿名の鑑賞者

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