バスで、席を譲られた。
38歳。まだ若いつもりだった。
でも、高校生くらいの男の子が、「どうぞ」って席を立った。
え?私に?
一瞬、戸惑った。でも、男の子は真剣な顔をしてた。
「ありがとう」って言って、座った。
男の子は、吊り革につかまった。
座りながら、複雑な気持ちになった。
私、そんなに疲れて見える?老けて見える?
帰ってから、鏡を見た。
確かに、20代の頃とは違う。目の下にクマ。ほうれい線。
でも、まだ30代だよ?
次の日、友達に話した。
「バスで席譲られちゃった」
友達は笑った。「それ、いいことじゃん」
「え?」
「親切にされたんだよ。素直に受け取ればいいじゃん」
その言葉に、ハッとした。
そうだ。あの子は、親切にしてくれたんだ。
私が老けて見えたからじゃなく、ただ優しかったから。
それなのに、私は「老けて見られた」って勝手に落ち込んでた。
翌週、またバスに乗った。
同じ男の子がいた。今回は、私が座ってて、男の子は立ってた。
老人が乗ってきた。男の子は、すぐに席を譲った。
ああ、この子、誰にでも席を譲る子なんだ。
私だけじゃなかった。
なんだか、温かい気持ちになった。
こういう子がいるんだな。ちゃんと、親切な心を持った子が。
バスを降りる時、男の子の横を通った。
「ありがとう、この前も」って声をかけた。
男の子は、照れくさそうに笑った。「いえ」
その笑顔が、良かった。
私も、誰かに親切にしようって思った。
小さなことでいい。ドアを開けて待つとか、道を譲るとか。
バスで席を譲られて、最初は複雑だった。
でも、今は嬉しい。
親切を受け取ることも、親切にすることも、どっちも大事だなって思った。
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