判で押した文面
ふつう・5分

判で押した文面:書類選考、15連敗

匿名の迷子・5分・ふつう

書類選考で落ちる度に、自分の存在が否定されているような気がした。

前職を辞めて3ヶ月。最初は「すぐに次が見つかるだろう」と思っていた。それなりにキャリアもあったし、経験もある。でも現実は甘くなかった。

応募した会社から返ってくるのは、判で押したような「慎重に選考した結果」という文面。15社。すべて書類選考で落ちた。面接にすら進めない。

夜、パソコンの前で求人サイトを開く。条件で絞り込む。「これなら」と思う求人を見つける。職務経歴書を修正する。送信する。そして、数日後に来る不採用通知。

この繰り返しで、私は少しずつ壊れていった。

「自分には何もできないんだ」
「社会に必要とされていない」
「これまでの経験なんて、無価値だったんだ」

毎日、そんな言葉で自分を責めた。朝起きられなくなった。ベッドから出るのが怖かった。鏡を見るのも嫌だった。そこに映っているのは、社会から拒絶された人間だから。

ある日、もう限界だと思った。でも同時に、ふと疑問が浮かんだ。

「そもそも、私は何がしたいんだろう?」

今まで応募していたのは、全部「前職と同じ業界」の求人だった。それが当たり前だと思っていた。経験を活かすべきだと思っていた。でも、本当にそうなのか?

私は何がしたいのか。何が好きなのか。何を大切にしたいのか。

ノートに書き出してみた。最初は何も出てこなかった。でも、手を動かしているうちに、少しずつ言葉が出てきた。

「人と話すのが好き」
「誰かの役に立ちたい」
「でも、数字に追われるのは苦手」
「静かな環境で、丁寧に仕事をしたい」

それを眺めていたら、気づいた。前職は、私が本当にやりたいことじゃなかったのかもしれない。ただ、「これしかできない」と思い込んでいただけかもしれない。

試しに、全く違う業界の求人を見てみた。介護、図書館、カウンセリング補助、NPO。今までの自分なら「経験がないから無理」と思って開きもしなかった求人。

でも、読んでいるうちに、心が動いた。「これ、やってみたいかも」と思った。

勇気を出して、応募してみた。職務経歴書には、前職の経験を「こういう形で活かせます」と、視点を変えて書いた。志望動機には、自分が本当に大切にしたいことを、正直に書いた。

1週間後、面接の連絡が来た。

面接では、自分の言葉で話せた。取り繕わなくていいと思えた。「ここで働きたい」と心から思えた。

そして、採用された。

今、私は全く違う業界で働いている。給料は前職より下がった。でも、毎朝起きるのが苦痛じゃない。仕事が終わった後、「今日も良い一日だった」と思える。

15連敗は、無駄じゃなかった。あの挫折がなければ、私は自分と向き合わなかった。「これまでの自分」に固執し続けていた。

あの時の私に必要だったのは、16社目の応募じゃなくて、一度立ち止まることだった。

私は遠回りして、ようやく自分の居場所を見つけた。それもまた、ありなんだと思う。

― 匿名の迷子

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