娘の小学校の運動会。私は会社にいた。
1ヶ月前から分かっていた日程。でも、その日は大事なプレゼンが入っていて、私が休むと同僚に迷惑がかかる。上司に相談したけど、「厳しいな」という反応だった。
夫に頼んだ。「お願い、今年はあなたが見てきて」
夫は快く引き受けてくれた。でも、娘は言った。
「ママも来てほしかった」
その言葉が、ずっと胸に刺さっていた。
運動会当日の朝、娘は弁当を持って学校に行った。私は娘を玄関で見送って、そのままスーツに着替えて会社に向かった。電車の中で、他の親子連れを見た。お母さんたちは、カメラを持って楽しそうに話している。
私は、母親失格なんじゃないか。
プレゼンは無事に終わった。でも、頭の中はずっと娘のことでいっぱいだった。今頃、徒競走かな。ダンスかな。夫はちゃんと写真撮ってくれてるかな。
夕方、家に帰ると娘が駆け寄ってきた。
「ママ、見て!金メダルもらったよ!」
娘は嬉しそうに、手作りの金メダルを見せてくれた。夫が撮ってくれた動画を一緒に見た。娘は一生懸命走っていて、転びそうになりながらも最後まで頑張っていた。
「ママ、見れなくてごめんね」
そう言ったら、娘は首を横に振った。
「大丈夫だよ。ママ、お仕事頑張ってたんでしょ?パパがいっぱい応援してくれたから」
その言葉に、涙が出そうになった。
私は完璧な母親じゃない。仕事と子育ての両立なんて、綺麗事じゃできない。どちらかを選ばなきゃいけない時、罪悪感はいつもついてくる。
でも、娘は分かってくれている。私が働いていること。頑張っていること。すべてに参加できなくても、愛していること。
その夜、娘が寝た後、夫と話した。
「ごめん、任せちゃって」
「いいよ。俺が見れて良かった。お前も大事な仕事だったんだろ?」
夫は優しく言ってくれた。でも、私の中の罪悪感は消えなかった。
それでいいのかもしれない。罪悪感を感じるのは、娘のことを大切に思っているからだ。完璧にできなくても、それが愛情の形なんだと思う。
次の運動会は、絶対に行こうと思った。でも、もし行けなくても、私は自分を責めすぎないようにしようと思う。
働く母親は、いつも何かを諦めている。でも、諦めた分だけ、他の何かを守っている。それを忘れないようにしたい。
娘の金メダルは、今もリビングに飾ってある。それを見る度に思う。
完璧じゃなくても、私は母親だ。それでいいんだと。
---
*© 2025 匿名の母*