いちごのショート
そっと・4分

いちごのショート:40歳、初めて自分の誕生日を祝った

匿名の40歳・4分・そっと

40年間、一度も自分の誕生日を祝ったことがなかった。

子どもの頃は、家が貧しくて誕生日どころじゃなかった。大人になってからは、「自分の誕生日なんて、どうでもいい」と思っていた。友達に祝われても、なんだか気恥ずかしくて、適当に流していた。

誕生日は、ただの1日。特別な日じゃない。そう思っていた。

でも今年、40歳の誕生日。ふと思った。

「一度くらい、自分で自分を祝ってもいいんじゃないか」

誰かに祝ってもらうのを待つんじゃなくて、自分で自分を祝う。そんなこと、今まで考えたこともなかった。でも、やってみようと思った。

誕生日の前日、ケーキ屋さんに行った。ショーケースには色とりどりのケーキが並んでいる。どれも美味しそうだった。

「一人で食べるんですけど、小さいサイズってありますか?」

店員さんは笑顔で、「ありますよ」と答えてくれた。私は、いちごのショートケーキを選んだ。子どもの頃、一度だけ食べたことがある味。あの時の記憶が、ふと蘇った。

誕生日当日。朝、いつもより早く起きた。部屋を掃除して、テーブルにケーキを置いた。コーヒーを淹れて、椅子に座った。

ケーキの箱を開ける。いちごが綺麗に並んでいて、白いクリームが柔らかそうだった。ろうそくなんてないけど、それでもいい。

「40歳、おめでとう」

自分に向かって、小さく呟いた。最初は恥ずかしかった。でも、口にしてみたら、なんだか嬉しくなった。

フォークでケーキを切って、一口食べた。甘くて、ふわふわで、幸せな味がした。

泣きそうになった。

40年間、誰かに祝ってもらうことばかり考えていた。でも、一番大事なのは、自分で自分を祝うことだったのかもしれない。

「よく、ここまで生きてきたね」
「色々あったけど、頑張ったね」
「これからも、無理しないでいいからね」

心の中で、自分に語りかけた。ケーキを食べながら、ゆっくりとコーヒーを飲んだ。

誰もいない部屋で、一人で誕生日を祝う。寂しいと思うかもしれない。でも、私は寂しくなかった。むしろ、満たされていた。

その日、私は自分に小さなプレゼントも買った。ずっと欲しかった本。読み始めたら、止まらなくなった。夜まで読んで、読み終わった時には、心が温かくなっていた。

40歳の誕生日。特別なイベントがあったわけでも、誰かと過ごしたわけでもない。でも、私にとっては特別な日になった。

小さなケーキ一つで、こんなに気持ちが変わるとは思っていなかった。

「よく生きてきたね」と、自分に言ってみた。40年生きて、初めて言った。それだけで、何かが変わる気がした。

41歳の誕生日も、自分で祝おうと思う。それが、これからの私の新しい習慣になるかもしれない。

― 匿名の40歳

同じ棚から、もう一冊

研究所道具屋猫の国の地図