恐竜の折り紙
ふつう・4分

恐竜の折り紙:息子が「パパなんか嫌い」って言った夜

匿名の父・4分・ふつう

息子が6歳の時、言われた言葉。

「パパなんか嫌い。ママがいい」

その日、私は仕事で疲れていた。帰りが遅くなって、帰宅したのは夜9時過ぎ。息子はまだ起きていて、リビングで妻と一緒にテレビを見ていた。

「おかえり」という妻の声に、私は適当に返事をした。息子が「パパ、見て見て!」と何かを見せようとしたけど、「後でね」と言って、先にシャワーを浴びた。

シャワーから出たら、息子は泣いていた。

「どうしたの?」と聞いたら、妻が小さく首を横に振った。「もう寝なさい」と息子に言ったら、息子は泣きながら言った。

「パパなんか嫌い。いつも後でって言う。ママがいい」

その言葉が、胸に刺さった。

息子は部屋に行ってしまった。妻は何も言わず、後片付けを始めた。私は、リビングに一人残された。

確かに、最近息子とちゃんと話していなかった。朝は早く出て、夜は遅く帰る。週末も疲れていて、つい「後で」と言ってしまう。

でも、仕事をしてるのは家族のためだ。お金を稼ぐために頑張っている。それなのに、「嫌い」なんて。

そう思ったけど、本当にそうだろうか?

息子が見せたかったものは、幼稚園で作った折り紙だった。テーブルの上に置かれたままになっていた。恐竜の形をした、少しぐちゃぐちゃな折り紙。

息子は、これを見せたかっただけだった。5分もかからない。それなのに、私は「後で」と言って、結局見なかった。

翌朝、早く起きて息子の部屋に行った。まだ寝ている息子の横に座って、昨日の折り紙を手に取った。

息子が目を覚ました。

「パパ、これ見て」

私は折り紙を持って、息子に見せた。

「すごいね、恐竜だ。昨日見せてくれたんだよね。ごめん、ちゃんと見てあげられなくて」

息子は少し驚いた顔をしていたけど、すぐに笑顔になった。

「これね、ティラノサウルスなんだよ。先生が教えてくれたの」

息子は嬉しそうに説明してくれた。私はちゃんと聞いた。質問もした。息子は、どんどん話してくれた。

「パパ、好き」

息子がそう言って、私に抱きついてきた。

昨日の「嫌い」は、消えたわけじゃない。でも、「好き」を取り戻せた。それだけで、救われた気がした。

それから、私は変わろうと思った。どんなに疲れていても、息子の話を5分だけ聞く。それだけでいい。完璧な父親になれなくても、息子の顔を見る時間を作る。

仕事は大事だ。でも、息子が「パパ、見て」と言ってくれる時間は、今しかない。その時間を、後回しにしたくない。

今でも、息子に怒られることはある。「パパ、スマホばっかり見てる」って。その度に、ハッとする。

完璧な父親じゃない。でも、少しずつ、息子との時間を大切にできるようになってきた。

息子の折り紙は、今も私の財布に入っている。

ぐちゃぐちゃのまま、入れている。

― 匿名の父

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