「今から始めるには、遅すぎるかな」
陶芸教室のチラシを手に、そう思った。
48歳。子どもは大学生になって、少しだけ自分の時間ができた。夫は相変わらず忙しくて、週末も家にいないことが多い。一人で過ごす時間が増えて、何か新しいことを始めたいと思った。
でも、48歳から陶芸なんて。今更遅いんじゃないか。若い人ばかりだったらどうしよう。下手すぎて恥ずかしい思いをするかもしれない。
そんな不安で、チラシを何度も捨てそうになった。でも、結局捨てられなかった。
ある日、勇気を出して電話した。
「あの、初心者なんですけど、大丈夫ですか?」
「もちろんです。皆さん初心者から始められてますよ」
優しい声に、少し安心した。体験教室に申し込んだ。
当日、教室に行くと、色々な年代の人がいた。20代の若い女性もいれば、私より年上の男性もいた。「年齢なんて関係ない」という先生の言葉に、ほっとした。
初めてろくろに触った。粘土が、するすると回る。手を添えると、形が変わっていく。でも、思い通りにはいかない。ぐちゃぐちゃになって、何度もやり直した。
周りを見ると、みんな真剣に作業している。上手い人も、私みたいに苦戦している人もいる。でも、誰も他人のことなんて気にしていない。
2時間があっという間に過ぎた。できたのは、いびつな小鉢。でも、自分で作ったと思うと、なんだか愛おしかった。
「次も来ます」
帰り際、先生にそう言った。先生は笑顔で、「お待ちしてます」と言ってくれた。
それから毎週、陶芸教室に通うようになった。少しずつ、形がまともになってきた。湯呑み、皿、花瓶。作るたびに、新しい発見がある。
粘土に触れている時間は、何も考えなくていい。仕事のことも、家族のことも、すべて忘れて、ただ目の前の土と向き合う。その時間が、とても心地よかった。
教室の仲間もできた。年齢も職業もバラバラだけど、陶芸が好きという共通点で繋がっている。たまに、みんなでお茶を飲みながら、作品について話す。そんな時間も楽しい。
夫に作った湯呑みを見せたら、「へえ、すごいじゃん」と言ってくれた。娘は「ママ、楽しそうだね」と笑った。
48歳から始めた陶芸。遅いなんてことはなかった。むしろ、今だからこそ楽しめている気がする。
若い頃は、時間もお金もなかった。子育てに追われて、自分のことは後回しだった。でも今は違う。少しだけ余裕ができて、自分のために時間を使える。
これから10年、20年。まだまだ時間はある。陶芸を続けて、いつか個展を開けたらいいな。そんな夢も、少しずつ膨らんでいる。
もしあなたが、「今から始めるには遅すぎる」と思っているなら、そんなことはない。何歳からでも、新しいことは始められる。
大事なのは、年齢じゃない。「やってみたい」という気持ちだけ。
私は、48歳で陶芸を始めて良かった。これからも、ゆっくりと続けていこうと思う。
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