← 図書館へ戻る
🪹

子育てが終わったら、何もない自分に気づいた

📅 2025-11-03⏱️ 5分✍️ 匿名の母
子育て空虚感アイデンティティ再出発模索
息子が家を出た日、私は泣かなかった。 「頑張ってね」と笑顔で見送った。夫と二人、手を振った。息子は振り返らずに歩いて行った。それでいいと思った。 でも、家に戻った瞬間、急に静かになった。 息子の部屋は空っぽだった。ベッドも、机も、すべて持って行った。カーテンだけが、風に揺れていた。 これから、どうしよう。 20年間、私は「母親」だった。朝ごはんを作って、お弁当を詰めて、洗濯をして、夜ご飯を作って。息子の予定を把握して、部活の送り迎えをして、進路の相談に乗って。 すべてが、息子を中心に回っていた。それが当たり前だった。でも今、息子はいない。 夫は相変わらず仕事で忙しい。朝早く出て、夜遅く帰る。休日もゴルフや付き合いで、ほとんど家にいない。夫婦二人の時間なんて、ほとんどない。 一人で過ごす時間が、急に増えた。最初は「やっと自由になった」と思った。好きな時に出かけられる。好きなものを食べられる。誰かのスケジュールに合わせなくていい。 でも、数週間経った頃、気づいた。 私には、何もない。 趣味もない。友達もほとんどいない。仕事はパートで、やりがいなんて感じたことがない。子育てが終わった今、私は何者なんだろう。 ある日、スーパーで買い物をしていたら、昔の同僚に会った。彼女は、バリバリ働いていて、キラキラしていた。 「久しぶり!元気だった?」 「うん、まあまあ」 彼女は仕事の話、趣味の話、色々話してくれた。私は、何も話すことがなかった。子どもが独立したこと。それくらいしか、話題がなかった。 家に帰って、鏡を見た。そこにいるのは、疲れた中年の女性だった。いつの間にか、こんなに老けていたんだ。 「このままでいいのか?」 自分に問いかけた。でも、答えは出なかった。 それから数ヶ月、ぼんやりと過ごした。夫に「最近元気ないけど、大丈夫?」と聞かれた。「大丈夫」と答えたけど、大丈夫じゃなかった。 ある日、図書館で本を借りた。タイトルは「50代からの生き方」。読んでみたら、同じような悩みを抱えている人がたくさんいることを知った。 「空の巣症候群」という言葉も、初めて知った。子育てが終わって、喪失感を抱える母親たち。私だけじゃなかったんだ。 本には、色々な提案が書いてあった。新しい趣味を見つける。資格を取る。ボランティアをする。友達を作る。 どれも、すぐにはできなかった。でも、少しずつ試してみようと思った。 まずは、近所のヨガ教室に通い始めた。体が硬くて、ポーズが全然できなかった。でも、先生は優しくて、周りの人も温かかった。 次に、パソコン教室に行った。エクセルとワードを習った。難しかったけど、少しずつできるようになった。 そして今、私は資格の勉強をしている。介護の資格。取れるかどうか分からない。でも、やってみたいと思った。 子育てが終わった今、私には何もない。でも、これから作ればいい。新しい自分を、ゆっくりと。 息子は、たまに電話をくれる。「元気?」と。私は「元気だよ、頑張ってるよ」と答える。それは、嘘じゃない。 もしあなたも、子育てが終わって空虚感を抱えているなら、焦らなくていい。今は何もなくても、これから見つければいい。 私はまだ、模索中だ。でも、少しずつ前に進んでいる。それだけで、十分だと思う。 --- *© 2025 匿名の母*