カウンター十席
そっと・4分

カウンター十席:定年後の夢は、小さなカフェを開くこと

匿名の夢想家・4分・そっと

あと3年で定年。私の夢は、小さなカフェを開くことだ。

若い頃から、ずっと思っていた。でも、現実は厳しかった。家族を養わなきゃいけない。安定した収入が必要だ。だから、夢は夢のまま、心の奥にしまっていた。

でも、定年が近づいてきた今、もう一度考え始めた。

「今なら、できるかもしれない」

退職金がある。年金もある。子どもは独立した。家のローンも終わった。リスクを取れる状況になった。

妻に話してみた。

「定年後、カフェを開きたいんだ」

妻は少し驚いた顔をしたけど、すぐに笑った。

「ずっと言ってたもんね。やってみたら?」

その言葉に、背中を押された。

それから、少しずつ準備を始めた。休日に、色々なカフェを巡った。内装、メニュー、接客、すべてを観察した。ノートにメモを取った。

夜は、カフェ経営の本を読んだ。開業資金、経営ノウハウ、失敗例。知らないことだらけだった。でも、読めば読むほど、ワクワクした。

友人に話したら、「定年後にそんな大変なこと、やめた方がいいんじゃない?」と言われた。確かに、リスクはある。失敗するかもしれない。お金を失うかもしれない。

でも、やらないで後悔するより、やって後悔する方がいい。そう思った。

今、物件を探している。駅から少し離れた、静かな場所がいい。小さくていい。10席くらいのカウンター席と、テーブル2つ。そんなイメージだ。

メニューも考えている。コーヒーは、自分で豆を選んで焙煎したい。軽食は、妻が得意な手作りサンドイッチとスープ。シンプルだけど、温かい。そんなカフェにしたい。

名前も決めた。「風のカフェ」。理由は特にない。なんとなく、そう呼びたかった。

夢を語ると、周りは色々言う。

「もう歳なんだから、のんびりしなよ」
「失敗したらどうするの?」
「若い人がやるならともかく」

確かに、そうかもしれない。でも、私にはまだ時間がある。あと20年、30年。その時間を、ただテレビを見て過ごすのは嫌だ。

定年後にカフェを開く。それは、若い頃の夢の続きじゃない。今の私が、本当にやりたいことだ。

お金儲けのためじゃない。ただ、自分の場所を作りたい。人と繋がりたい。誰かに「美味しかった」と言われたい。それだけで、十分だ。

妻は、最近カフェの本を読み始めた。「私、レジ担当ね」と笑いながら言う。息子も「頑張ってね」と応援してくれる。

もしかしたら、失敗するかもしれない。でも、やってみる価値はあると思う。

夢は、年齢に関係なく追いかけていいらしい。準備を始めてから、毎日が少しだけ違って見える。

私は、3年後に「風のカフェ」を開く。小さくても、自分の場所を作る。

それが、私のこれからの人生だ。

― 匿名の夢想家

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