最初の千字
そっと・4分

最初の千字:42歳、もう一度大学に行きたいと思った

匿名の社会人・4分・そっと

42歳で、大学に行きたいと思うなんて。

自分でも、頭がおかしいんじゃないかと思った。今更、何を学ぶんだ。仕事もある。お金もかかる。現実的じゃない。

でも、その気持ちは消えなかった。

若い頃、私は大学に行けなかった。家が貧しくて、高校を卒業してすぐ働いた。それが当たり前だと思っていた。でも、ずっと心のどこかで、「大学で学びたかった」という思いがあった。

20年働いて、少し余裕ができた。貯金もある。子どももいない。今なら、挑戦できるかもしれない。

ある日、通信制大学のパンフレットを取り寄せた。心理学部。興味があった分野だった。

パンフレットを眺めながら、想像した。レポートを書く自分。試験を受ける自分。卒業する自分。ワクワクした。

でも同時に、不安もあった。

「42歳で学生なんて、場違いじゃないか」
「仕事と両立できるのか」
「卒業したところで、何になるんだ」

友人に話したら、「今更学歴なんて意味ないでしょ」と笑われた。確かに、キャリアアップのためじゃない。ただ、学びたいだけだ。

それでも、申し込んだ。

入学式は、オンラインだった。画面越しに、色々な年代の学生がいた。20代もいれば、私より年上の人もいた。「みんな、それぞれの理由でここにいるんだ」と思ったら、少し安心した。

最初の課題は、レポート5000字。テーマは「自己理解について」。最初の1000字を書くのに、3時間かかった。文章を書くのが、こんなに難しいなんて。

仕事が終わって、夜中に勉強する。週末も、図書館に通う。睡眠時間が減って、疲れも溜まった。でも、不思議と辛くなかった。

むしろ、楽しかった。新しいことを学ぶ喜び。知らなかったことが分かる瞬間。レポートを提出して、先生から「よく書けています」とコメントをもらった時の嬉しさ。

すべてが、新鮮だった。

半年経った頃、初めてのスクーリングがあった。対面で授業を受ける日。緊張して、早めに会場に着いた。

教室には、色々な人がいた。若い人もいれば、私と同じくらいの人もいた。みんな、真剣にノートを取っている。

授業が終わった後、隣の席の女性が話しかけてきた。

「お疲れ様でした。大変ですよね」
「そうですね。でも、楽しいです」

彼女は50代で、看護師をしながら心理学を学んでいるという。「昔から興味があって、今やっと学べる」と笑った。

その日、何人かと連絡先を交換した。同じ目標を持つ仲間ができたことが、嬉しかった。

今、2年目に入った。まだ卒業まで2年ある。でも、焦らない。ゆっくり、自分のペースで進めばいい。

「学び直したい」と思ってから、願書を出すまで、2年かかった。遅すぎたかどうかは、もう考えていない。

私は、44歳で卒業する予定だ。その時、何が待っているか分からない。でも、それでいい。

― 匿名の社会人

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