デイサービス
ずっしり・5分

デイサービス:親の介護で、仕事を辞めた

匿名の介護者・5分・ずっしり

母が倒れたのは、去年の秋だった。

脳梗塞。一命は取り留めたけど、半身麻痺が残った。もう一人では生活できない。誰かが、そばにいないといけない。

父は5年前に亡くなった。兄は遠方に住んでいて、家族がいる。妹も仕事が忙しい。

結局、私が面倒を見ることになった。

最初は、仕事を続けながらなんとかしようと思った。朝、母の世話をして、仕事に行って、夜また母のところに行く。週末は、ずっと母と一緒。

でも、無理だった。

母は夜中に何度も起きる。トイレの介助、水を飲ませる、体位を変える。睡眠時間は、3時間くらい。朝、会社に行っても、頭が回らない。ミスが増えた。

上司に相談した。

「介護休暇を取らせてください」

でも、会社の制度は3ヶ月まで。その後は、どうするのか。介護はいつ終わるか分からない。

結局、退職することにした。

「本当にいいのか?」

上司は心配してくれた。私も迷った。キャリアを捨てていいのか。貯金は減っていく。将来はどうなるのか。

でも、母を一人にはできなかった。

退職した日、家に帰って母に報告した。

「お母さんの世話をするために、仕事辞めたよ」

母は、涙を流した。

「ごめんね、ごめんね」

母は何度も謝った。その度に、胸が痛んだ。母が謝ることじゃない。でも、母も辛いんだと思った。

介護生活が始まった。朝、母を起こして、着替えさせて、朝食を食べさせる。リハビリに連れて行く。昼食、おむつ交換、入浴介助。夜、また食事、薬、寝かせる。

毎日、同じことの繰り返し。自分の時間なんて、ほとんどない。友達と会うこともできない。趣味も諦めた。

ある日、鏡を見た。そこには、疲れ切った自分がいた。いつの間にか、こんなに老けていた。

「私の人生、これでいいのか?」

そう思った瞬間、自分を責めた。母のために頑張っているのに、なんでこんなこと思うんだ。

でも、辛かった。本当に辛かった。

兄に電話した。

「もう限界。少し手伝って」

でも、兄は言った。

「俺も忙しいんだよ。お前が辞めたんだから、頑張ってくれよ」

その言葉に、怒りが込み上げた。でも、何も言えなかった。

半年経った頃、母がデイサービスに通えるようになった。週3回、数時間だけ、自分の時間ができた。

その時間、私は何もしなかった。ただ、ベッドに横になって、天井を見ていた。何も考えたくなかった。

でも、少しずつ気持ちが楽になった。誰かに母を任せられる。それだけで、心が軽くなった。

今、介護を始めて1年が経った。母の状態は、あまり変わっていない。この生活が、いつまで続くか分からない。

後悔がないと言えば、嘘になる。仕事を続けていたら、今頃どうなっていたか。そう思うこともある。

でも、母を見捨てることはできなかった。それが、私の選択だった。

助けを求めていいと知るのにも、時間がかかった。デイサービス、ショートステイ、ケアマネージャー。使えるものは全部使うと決めたのは、天井を見ていたあの数時間のおかげだと思う。

私はまだ、答えが出ていない。でも、今できることを、ゆっくりやっていく。それしかないと思っている。

― 匿名の介護者

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