最後にお酒を飲んだのは、3ヶ月前。
あの日、私は朝から酒を飲んでいた。仕事にも行かず、部屋で一人、缶ビールを空けた。何本飲んだか覚えていない。気づいたら、夜だった。
部屋は散らかっていた。空き缶が転がっていた。スマホを見たら、会社から何度も着信があった。もう、どうでもよかった。
そして、思った。
「このままじゃ、死ぬな」
お酒を飲み始めたのは、20代の頃。最初は、付き合い程度だった。でも、ストレスが溜まると、お酒に逃げるようになった。
「飲めば、楽になる」
そう思って、毎晩飲んだ。量も増えていった。ビール1本が、3本になり、5本になった。焼酎も飲むようになった。
朝、二日酔いで起きる。仕事に行く。辛い。帰ったら、また飲む。その繰り返し。
「これは、依存症なんじゃないか」
そう思ったこともあった。でも、認めたくなかった。「俺はまだ大丈夫」と言い聞かせた。
でも、大丈夫じゃなかった。
仕事でミスが増えた。遅刻も増えた。上司に呼び出されて、「最近どうした?」と聞かれた。「すみません」としか言えなかった。
友達も離れていった。約束をすっぽかした。酔っ払って暴言を吐いた。「もういいよ」と言われた。
恋人もいたけど、別れた。「お酒と私、どっちが大事なの?」と聞かれた。答えられなかった。
気づいたら、一人だった。
あの日、朝から酒を飲んで、鏡を見た。そこにいるのは、自分じゃなかった。やつれて、目が死んでいる人間がいた。
「このままじゃ、死ぬ」
そう思って、ネットで「アルコール依存症」と検索した。そこに書いてあることが、全部自分に当てはまっていた。
「助けてほしい」
そう思って、病院に電話した。
次の日、専門のクリニックに行った。先生に、正直に話した。どれだけ飲んでいるか。仕事も人間関係も、全部ダメになったこと。
先生は、静かに聞いてくれた。そして、言った。
「あなたは、アルコール依存症です。でも、治療すれば回復できます」
その言葉に、少しだけ希望が見えた。
断酒を始めた。最初の1週間は、地獄だった。手が震える。汗が止まらない。眠れない。夢の中でも、お酒を飲んでいた。
「一杯だけなら、いいんじゃないか」
何度も思った。コンビニに行きかけた。でも、踏みとどまった。
2週間目。少しずつ、体が楽になってきた。手の震えが止まった。朝、すっきり起きられるようになった。
1ヶ月目。仕事に復帰した。同僚は、何も言わなかった。でも、優しく接してくれた。それが、嬉しかった。
2ヶ月目。自助グループに参加した。そこには、同じように苦しんでいる人たちがいた。みんな、正直に話していた。私も、話した。涙が出た。
そして今、3ヶ月。
まだ、お酒を飲みたいと思う時がある。特に、辛いことがあった時。でも、我慢する。一杯飲んだら、また元に戻る。それが怖い。
回復は、簡単じゃない。でも、不可能でもない。今日一日、飲まない。それだけを、続けている。
お酒を飲まなくなって、気づいたことがある。お酒がなくても、生きていける。むしろ、お酒がない方が、人生がクリアに見える。
もしあなたも、お酒に苦しんでいるなら、助けを求めてほしい。一人で抱え込まないで。専門の病院、自助グループ、相談窓口。色々ある。
依存症は、恥ずかしいことじゃない。病気だ。そして、治療できる病気だ。
私は、まだ回復の途中だ。でも、少しずつ前に進んでいる。
今日も、お酒を飲まない。明日も、飲まない。その積み重ねが、私の人生を取り戻していく。
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*© 2025 匿名の断酒者*