派遣社員として、10年働いてきた。
「いつ正社員になるの?」
そう聞かれることが、何度もあった。家族にも、友達にも、面接でも。
「派遣のままで、将来大丈夫?」
心配そうに言われる。その度に、自分でも不安になった。
最初は、正社員を目指していた。派遣は「つなぎ」のつもりだった。でも、なかなか正社員の仕事が見つからなかった。
30代になった。周りの友達は、正社員としてキャリアを積んでいる。昇進して、責任ある立場になっている。
私は、派遣のまま。
同窓会に行くと、「今、何してるの?」と聞かれる。「派遣で事務してる」と答えると、微妙な空気になる。「そうなんだ…」と言われて、話題が変わる。
惨めだった。「私は、負け組なのか」と思った。
でも、ある日気づいた。
私は、派遣という働き方が、嫌いじゃない。
派遣には、メリットがある。残業が少ない。責任が軽い。定時で帰れる。プライベートの時間が確保できる。
正社員の友達は、毎日残業している。休日出勤もある。家に帰っても、仕事のメールをチェックしている。「疲れた」が口癖になっている。
私は、定時で帰って、趣味の時間がある。本を読む。映画を見る。友達と会う。そんな時間が、私には大切だった。
もちろん、不安もある。
ボーナスはない。昇給もほとんどない。契約が切れたら、収入が途絶える。老後の貯金も、不安だ。
でも、だからといって、正社員になりたいかと言われると、そうでもない。
正社員になったら、責任が増える。残業が増える。自分の時間が減る。それは、私が望む人生じゃない。
「キャリアって、何だろう」
そう考えた時、気づいた。キャリアは、肩書きや地位だけじゃない。自分らしく働くことも、キャリアの一つなんじゃないか。
今の職場は、居心地がいい。同僚も優しいし、仕事も難しすぎない。ストレスも少ない。これが、私に合っている。
もちろん、将来は不安だ。でも、今を大切にしたい。今の生活が、私には心地よい。
派遣を見下す人もいる。「いつまで派遣なの?」と言われることもある。でも、もう気にしない。
私は、私の人生を生きている。誰かと比べる必要はない。
もしあなたも、派遣や非正規で働いていて、肩身の狭い思いをしているなら、自分を責めないでほしい。
働き方は、人それぞれ。正社員が正解とは限らない。
大事なのは、自分が納得して働けているかどうか。それだけだと思う。
私は、派遣で10年働いてきた。これからも、たぶん派遣のまま。
それでいいと思っている。
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