木曜日のカフェ
ふつう・4分

木曜日のカフェ:在宅勤務で、誰とも話さない日が続く

匿名の在宅ワーカー・4分・ふつう

気づいたら、3日間誰とも話していなかった。

在宅勤務が始まって、2年。最初は快適だった。通勤しなくていい。満員電車に乗らなくていい。自分のペースで働ける。

でも、だんだん辛くなってきた。

朝起きて、パソコンを開く。メールとチャットで仕事をする。会議はオンライン。顔を出さなくていい時もある。終業時間になったら、パソコンを閉じる。

その間、一言も声を出していない日がある。

「おはよう」も「お疲れ様」も言わない。コンビニに行っても、セルフレジだから店員と話さない。宅配が来ても、置き配だから誰とも会わない。

気づいたら、自分の声を忘れそうになっていた。

最初は、人と関わらなくていいのが楽だった。でも、今は寂しい。

オフィスにいた頃は、嫌なこともあった。苦手な上司もいた。雑談が面倒な時もあった。でも、少なくとも「人がいる」感覚はあった。

今は、パソコンの画面だけ。チャットの文字だけ。温度がない。

ある日、久しぶりに友達と電話した。

「元気?」
「うん、まあまあ」

でも、話すことがなかった。毎日家にいるから、何も起こらない。話すエピソードがない。

「最近、何してるの?」と聞かれても、「仕事と、あとは…」と言葉に詰まった。

電話を切った後、鏡を見た。いつの間にか、表情が乏しくなっていた。笑う機会が減っていた。

電話を切ったあと、試しに「あ」と声を出してみた。掠れていた。

まず、朝起きたら「おはよう」と声に出すことにした。誰もいないけど、自分に向かって言う。最初は変な感じだったけど、少しだけ気分が明るくなった。

コーヒーを淹れる時、「よし、頑張ろう」と呟く。仕事が終わったら、「お疲れ様」と自分に言う。

小さなことだけど、声を出すことで、自分がまだここにいることを確認できた。

次に、オンライン会議では意識的にカメラをオンにするようにした。顔を出すのは億劫だったけど、誰かに見られることで、少しだけ「人と繋がっている」感覚が戻ってきた。

それから、週に1回、近所のカフェに行くことにした。リモートワークOKのカフェで、数時間仕事をする。周りに人がいる。それだけで、孤独感が和らいだ。

店員さんに「いつもありがとうございます」と言われた時、久しぶりに誰かと会話した気がして、嬉しかった。

在宅勤務は、便利だ。それは今も変わらない。

今日は木曜日。カフェの日だ。

いつもの席で、店員さんに「いつもありがとうございます」と言われて、「いえ、こちらこそ」と返した。

声は、ちゃんと出た。

― 匿名の在宅ワーカー

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