気づいたら、3日間誰とも話していなかった。
在宅勤務が始まって、2年。最初は快適だった。通勤しなくていい。満員電車に乗らなくていい。自分のペースで働ける。
でも、だんだん辛くなってきた。
朝起きて、パソコンを開く。メールとチャットで仕事をする。会議はオンライン。顔を出さなくていい時もある。終業時間になったら、パソコンを閉じる。
その間、一言も声を出していない日がある。
「おはよう」も「お疲れ様」も言わない。コンビニに行っても、セルフレジだから店員と話さない。宅配が来ても、置き配だから誰とも会わない。
気づいたら、自分の声を忘れそうになっていた。
最初は、人と関わらなくていいのが楽だった。でも、今は寂しい。
オフィスにいた頃は、嫌なこともあった。苦手な上司もいた。雑談が面倒な時もあった。でも、少なくとも「人がいる」感覚はあった。
今は、パソコンの画面だけ。チャットの文字だけ。温度がない。
ある日、久しぶりに友達と電話した。
「元気?」
「うん、まあまあ」
でも、話すことがなかった。毎日家にいるから、何も起こらない。話すエピソードがない。
「最近、何してるの?」と聞かれても、「仕事と、あとは…」と言葉に詰まった。
電話を切った後、鏡を見た。いつの間にか、表情が乏しくなっていた。笑う機会が減っていた。
このままじゃダメだと思った。
まず、朝起きたら「おはよう」と声に出すことにした。誰もいないけど、自分に向かって言う。最初は変な感じだったけど、少しだけ気分が明るくなった。
コーヒーを淹れる時、「よし、頑張ろう」と呟く。仕事が終わったら、「お疲れ様」と自分に言う。
小さなことだけど、声を出すことで、自分がまだここにいることを確認できた。
次に、オンライン会議では意識的にカメラをオンにするようにした。顔を出すのは億劫だったけど、誰かに見られることで、少しだけ「人と繋がっている」感覚が戻ってきた。
それから、週に1回、近所のカフェに行くことにした。リモートワークOKのカフェで、数時間仕事をする。周りに人がいる。それだけで、孤独感が和らいだ。
店員さんに「いつもありがとうございます」と言われた時、久しぶりに誰かと会話した気がして、嬉しかった。
在宅勤務は、便利だ。でも、人との繋がりが薄れていく。それは、想像以上に辛いことだった。
完全に元通りにはならないけど、小さな工夫で少しずつ楽になってきた。
もしあなたも、在宅勤務で孤独を感じているなら、何か小さなことから始めてみてもいいかもしれない。
声を出す。誰かに会う。外に出る。それだけで、少し変わる。
私は今も在宅で働いている。でも、孤独と少しだけ付き合えるようになった。
それだけで、十分だと思う。
---
*© 2025 匿名の在宅ワーカー*