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電車のホームで、一歩踏み出せなかった

📅 2025-11-03⏱️ 5分✍️ 匿名の通勤者
自殺希死念慮電車生きる瞬間
あの朝、私は電車のホームの端に立っていた。 黄色い線の、さらに前。ホームの縁。 電車が来る。飛び込めば、終わる。そう思った。 毎朝、この駅を使っていた。でもこの日は、会社に行くつもりじゃなかった。ただ、ここで終わらせるつもりだった。 もう、限界だった。 仕事は地獄。毎日怒鳴られて、人格を否定されて。家に帰っても、誰もいない。友達もいない。家族とも疎遠。 「誰も、私がいなくなっても困らない」 そう思った。むしろ、いない方が周りも楽なんじゃないか。 遺書は書かなかった。誰に宛てて書けばいいのか、分からなかった。 ホームに立った。通勤ラッシュの時間。周りには、たくさんの人がいた。でも、誰も私のことなんて見ていない。 電車が来るアナウンスが流れた。 線路の向こうから、ライトが見えた。音が近づいてくる。 「今だ」 そう思った。一歩踏み出せば、すべてが終わる。 体に力を入れた。足を前に出そうとした。 でも、出せなかった。 体が、動かなかった。頭では「飛び込もう」と思っているのに、足が動かない。 電車が入ってきた。轟音。風。 私は、ただそこに立っていた。 電車が止まった。ドアが開いた。人が降りて、人が乗った。私は、乗らなかった。 ドアが閉まった。電車が出ていった。 私は、まだホームにいた。 なんで、飛び込めなかったんだろう。 怖かったのか。痛いのが嫌だったのか。それとも、本当は死にたくなかったのか。 分からなかった。 次の電車が来た。また、飛び込めなかった。 その次も。その次も。 気づいたら、1時間そこに立っていた。 ホームの端で、ただぼんやりと電車を見送っていた。 駅員さんが、声をかけてきた。 「お客さん、大丈夫ですか?」 その言葉を聞いた瞬間、泣き崩れた。ホームで、人目も気にせず泣いた。 駅員さんは、優しく肩に手を置いてくれた。 「辛かったですね」 その言葉に、また泣いた。 駅員室に連れて行かれた。お茶を出してもらった。 「誰か、連絡できる人はいますか?」 いない。そう言おうとして、思い出した。昔の友達の番号が、まだスマホに残っていた。 駅員さんが、代わりに電話してくれた。友達は、すぐに駅に来てくれた。 「どうしたの?」 友達は、心配そうに聞いてきた。何年も連絡してなかったのに、駆けつけてくれた。 その日、友達は仕事を休んで、ずっと一緒にいてくれた。病院にも付き添ってくれた。 先生に、正直に話した。死のうとしたこと。でも、できなかったこと。 先生は言った。 「体が、あなたを守ったんですね」 その言葉が、心に残った。 頭では死にたいと思っていた。でも、体は生きたがっていた。 それから、治療が始まった。すぐには良くならなかった。でも、少しずつ、霧が晴れていった。 今でも、あのホームを通る。電車に乗る。でも、もう端には立たない。 あの日、一歩踏み出せなくて良かった。体が止めてくれて良かった。 もしあなたも、今ホームの端に立っているなら、一歩踏み出さないでほしい。 体は、あなたを守ろうとしている。生きたがっている。 その声を、聞いてあげてほしい。 私は、あの日死ななかった。そして今、生きている。 まだ辛い日もある。でも、生きていて良かったと思える日も、少しずつ増えてきた。 それだけで、十分だと思う。 --- *© 2025 匿名の通勤者*