水を一杯
ふつう・4分

水を一杯:朝、起きられない自分を責めるのをやめた

匿名の朝寝坊・4分・ふつう

朝、目覚ましが鳴る。止める。二度寝。三度寝。

気づいたら、昼だった。

「またやってしまった」

自己嫌悪。罪悪感。「なんで起きられないんだ」「ダメな人間だ」。

毎朝、同じことの繰り返しだった。

うつになってから、朝が起きられなくなった。体が鉛のように重い。布団から出る気力がない。

会社には、遅刻の電話を入れる。「すみません、体調が…」。もう何度目か分からない。

上司の声は、明らかに不機嫌だった。同僚の目も冷たくなっていった。

「みんな、ちゃんと起きてるのに」
「自分だけ、なんでできないんだ」

そう思うと、さらに落ち込む。

ある日、医師に相談した。

「朝、起きられないんです。自分が情けなくて」

医師は、穏やかに言った。

「それは、病気の症状です。あなたの怠慢じゃありません」

その言葉に、驚いた。

「でも、みんな起きてるのに…」

「うつの人にとって、朝起きることは健康な人の何倍も大変なんです。それを、自分の意志の問題だと思わないでください」

その言葉を聞いて、少し楽になった。

でも、完全には信じられなかった。「甘えてるんじゃないか」「言い訳してるんじゃないか」。そんな声が、頭の中でずっと響いていた。

それから、考え方を変えてみることにした。

朝、起きられなかったら、「起きられなかったんだ」と事実を受け止める。「ダメだ」と責めない。

「今日も体が重いんだね。辛いね」

自分に、優しく語りかける。最初は変な感じだった。でも、続けているうちに、少しずつ変わってきた。

起きられた日は、「頑張ったね」と自分を褒める。たとえ昼に起きたとしても、「起きられたね」と認める。

以前なら、「昼まで寝てるなんて、ダメ人間だ」と思っていた。でも今は、「起きられただけ、進歩だ」と思う。

完璧じゃなくていい。少しずつでいい。

会社には、正直に話した。うつ病で治療中であること。朝が特に辛いこと。

理解してくれる人もいれば、理解してくれない人もいた。でも、それでいいと思った。

朝起きられない自分を、責めるのをやめた。それだけで、少し楽になった。

今でも、起きられない日はある。

今朝も、起きたら十時半だった。カーテンの隙間の光が、もう高いところにあった。

「起きられたね」

言ってから、台所で水を一杯飲んだ。

今日は、それが最初の仕事だった。

― 匿名の朝寝坊

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