朝、目覚ましが鳴る。止める。二度寝。三度寝。
気づいたら、昼だった。
「またやってしまった」
自己嫌悪。罪悪感。「なんで起きられないんだ」「ダメな人間だ」。
毎朝、同じことの繰り返しだった。
うつになってから、朝が起きられなくなった。体が鉛のように重い。布団から出る気力がない。
会社には、遅刻の電話を入れる。「すみません、体調が…」。もう何度目か分からない。
上司の声は、明らかに不機嫌だった。同僚の目も冷たくなっていった。
「みんな、ちゃんと起きてるのに」
「自分だけ、なんでできないんだ」
そう思うと、さらに落ち込む。
ある日、医師に相談した。
「朝、起きられないんです。自分が情けなくて」
医師は、穏やかに言った。
「それは、病気の症状です。あなたの怠慢じゃありません」
その言葉に、驚いた。
「でも、みんな起きてるのに…」
「うつの人にとって、朝起きることは健康な人の何倍も大変なんです。それを、自分の意志の問題だと思わないでください」
その言葉を聞いて、少し楽になった。
でも、完全には信じられなかった。「甘えてるんじゃないか」「言い訳してるんじゃないか」。そんな声が、頭の中でずっと響いていた。
それから、考え方を変えてみることにした。
朝、起きられなかったら、「起きられなかったんだ」と事実を受け止める。「ダメだ」と責めない。
「今日も体が重いんだね。辛いね」
自分に、優しく語りかける。最初は変な感じだった。でも、続けているうちに、少しずつ変わってきた。
起きられた日は、「頑張ったね」と自分を褒める。たとえ昼に起きたとしても、「起きられたね」と認める。
以前なら、「昼まで寝てるなんて、ダメ人間だ」と思っていた。でも今は、「起きられただけ、進歩だ」と思う。
完璧じゃなくていい。少しずつでいい。
会社には、正直に話した。うつ病で治療中であること。朝が特に辛いこと。
理解してくれる人もいれば、理解してくれない人もいた。でも、それでいいと思った。
朝起きられない自分を、責めるのをやめた。それだけで、少し楽になった。
今でも、起きられない日はある。
今朝も、起きたら十時半だった。カーテンの隙間の光が、もう高いところにあった。
「起きられたね」
言ってから、台所で水を一杯飲んだ。
今日は、それが最初の仕事だった。
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