一口だけ
ずっしり・5分

一口だけ:食べることが、怖くなった

匿名の食事困難者・5分・ずっしり

食べることが、怖くなった。

最初は、ダイエットのつもりだった。少し痩せたい。それだけだった。

カロリーを気にするようになった。食べ物の成分表示を見る。「これは何キロカロリー」「これは脂質が多い」。

少しずつ、食べる量が減っていった。

そして、ある日気づいた。食べることが、怖い。

食べたら太る。太ったら、醜くなる。醜くなったら、誰からも愛されない。

そんな思考が、ぐるぐる回った。

朝ごはんは、リンゴ半分。昼ごはんは、サラダだけ。夜ごはんは、食べない。

体重が減っていった。最初は嬉しかった。「痩せた」「頑張った」。

でも、止まらなくなった。

もっと痩せたい。もっと軽くなりたい。数字が減るのが、唯一の楽しみになった。

体が、おかしくなっていった。髪が抜ける。生理が止まる。常に寒い。立ちくらみ。

でも、食べるのが怖かった。

友達とご飯に行っても、ほとんど食べない。「ダイエット中だから」と笑ってごまかす。

家族は心配した。「ちゃんと食べなさい」と言われた。でも、食べられなかった。

ある日、倒れた。貧血で、意識を失った。

病院で、診断された。「摂食障害です」。

先生は言った。

「このままでは、命に関わります」

その言葉を聞いても、「でも、太りたくない」と思っている自分がいた。

入院することになった。点滴で栄養を入れられた。少しずつ、食事も出された。

最初は、食べられなかった。口に入れると、吐き気がする。罪悪感が襲ってくる。

でも、看護師さんが優しかった。

「少しずつでいいよ。一口だけでもいいから」

一口だけ、食べてみた。飲み込むのが、こんなに難しいなんて。

それから、リハビリが始まった。食事のリハビリ。

一日三食、決められた量を食べる。最初は地獄だった。食べる度に、罪悪感。「太る」「醜くなる」。

でも、先生は言った。

「食べることは、罪じゃない。生きるために必要なことです」

その言葉を、何度も自分に言い聞かせた。

少しずつ、食べられるようになった。体重も増えた。最初は、鏡を見るのが怖かった。でも、顔色が良くなった。髪も生えてきた。

退院して、今も治療は続いている。完全に治ったわけじゃない。食べることが怖い日もある。

でも、「食べてもいい」と思えるようになってきた。

食べることは、罪じゃない。太ることは、醜いことじゃない。体は、生きるために栄養を必要としている。

もしあなたも、食べることに恐怖を感じているなら、助けを求めてほしい。一人で抱え込まないで。

摂食障害は、病気だ。治療できる病気だ。

私は、まだ回復の途中だ。でも、少しずつ前に進んでいる。

いつか、食べることが楽しいと思える日が来るといい。そう信じている。

― 匿名の食事困難者

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