五時のお茶
ふつう・4分

五時のお茶:夕方になると、不安の波が来る

匿名の夕暮れ恐怖症・4分・ふつう

夕方5時を過ぎると、不安が襲ってくる。

毎日、同じ時間。太陽が傾き始めて、空が茜色になる頃。

理由は分からない。でも、確実に来る。

胸が苦しくなる。呼吸が浅くなる。心臓がドキドキする。「何か悪いことが起こるんじゃないか」という漠然とした不安。

最初は、なんでこうなるのか分からなかった。朝は平気。昼も大丈夫。でも、夕方になると来る。

「気のせいだ」と思おうとした。でも、毎日来る。避けられない。

仕事中も、時計を見る。「もうすぐ5時だ」と思うと、不安が先取りでやってくる。

家に帰っても、夕方の不安は続く。窓の外が暗くなっていくのを見ると、さらに不安になる。

「このまま、夜が来る」

夜も怖かった。暗闇が怖い。一人が怖い。何かが起こりそうで怖い。

医師に相談した。

「夕方になると、不安が強くなるんです」

医師は、頷いた。

「夕暮れ症候群、と呼ばれることもあります。日が暮れる時間帯に、不安が強くなる人は多いです」

そういう名前があるんだと知って、少し安心した。自分だけじゃなかったんだ。

「なんで夕方なんですか?」

「色々な理由があります。日光が減ることで、セロトニンが減る。一日の終わりで疲れが出る。夜への不安。人によって違いますが、よくあることです」

それから、夕方の不安に対処する方法を教えてもらった。

まず、夕方前に準備する。5時前に、少し休憩を取る。深呼吸をする。温かい飲み物を飲む。

夕方になったら、部屋の明かりを早めにつける。暗くなる前に、明るくする。それだけで、少し楽になった。

音楽をかけることにした。静かすぎると、不安が増幅する。好きな音楽を流して、気を紛らわせる。

一番効いたのは、「夕方ルーティン」を作ることだった。

5時になったら、お茶を淹れる。窓辺に座って、外を見る。不安が来ても、「いつものことだ」と受け入れる。

「またこの時間が来た。でも、大丈夫。いつも通り、過ぎていく」

そう自分に言い聞かせる。

最初は効果が分からなかった。でも、続けているうちに、少しずつ楽になってきた。

不安は、完全には消えない。今でも夕方になると、胸が苦しくなることはある。

でも、「これは一時的なものだ」と分かっている。夜が来ても、朝はまた来る。不安は、ずっとは続かない。

今日も5時に、お茶を淹れた。

窓の外が茜色になって、いつもの波が来て、お茶を飲み終わる頃に、引いていった。

空が完全に暗くなる前に、部屋の電気をつける。

それが、私の夕方になった。

― 匿名の夕暮れ恐怖症

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